理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-8-6
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一般演題
脳性麻痺両麻痺患者に対する下肢エルゴメーター運動が下肢の痙性麻痺に与える影響
藤本 純平小池 有美石田 和也南祇 達男田島 文博
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キーワード: 脳性麻痺, 痙性, 運動負荷
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抄録

【はじめに】脳性麻痺などの上位運動ニューロン障害では、痙性や筋腱の拘縮、筋力低下が惹起される。以前は脳性麻痺患者に対する積極的な運動負荷は痙性の亢進や関節可動域の減少につながるという考えがあった。しかし最近の研究では、脳性麻痺患者の長期的なトレッドミル運動は、足部のスティフネスを改善させると報告されており、運動負荷が痙性の低下や関節可動域の拡大につながる可能性がある。そこで今回、脳性麻痺痙直型両麻痺患者を対象に、下肢エルゴメーター運動が下肢筋の痙性や関節可動域に与える影響と歩行機能について検討を行った。

【方法】対象は歩行可能な脳性麻痺痙直型両麻痺患者8例(男性7例、女性1例、年齢:16.3±4.3、BMI:18.4±4.1kg/㎡)とした。測定は、ベッド上背臥位で5分間安静後、10-meter walk test(10MWT)を行い、再びベッド上背臥位で5分間安静にした。安静後測定として背臥位で、血圧と脈拍、左右の膝関節伸展の関節可動域測定と筋緊張検査(Modified Ashworth scale:MAS)(Modified Tardieu scale:MTS)を行ない、その後下肢エルゴメーター運動を10分間行った。運動後測定は、血圧と脈拍、関節可動域測定、筋緊張検査、10MWTを実施した。測定後再び5分間背臥位で安静に過ごし、回復後測定も駆動後と同じ項目、順序で測定した。運動前後、回復後の統計解析は、MASはフリードマン検定で群間差を検証しpost-hocとして、Wilcoxon検定を用いた。平均血圧、脈拍、MTS、関節可動域、10MWTはrepeated ANOVAで群間差を検定しpost-hocとして、t検定を用いた。またそれぞれBonferroni補正を行った。有意水準はP<0.05とした。

【結果】平均血圧は安静時と比較し駆動後、回復後で差はなかった。脈拍は安静時と比較し、駆動後で有意に上昇した(p<0.05)。回復後は安静時と比較し差を認めなかった。MASの両膝関節伸展は安静時と比較し、駆動後、回復後で有意に低下した(p<0.05)。MTSの両膝関節伸展角度は安静時と比較し、駆動後で有意に拡大した(p<0.01)。回復後も安静時と比較し、有意に拡大した(左:p<0.01/右:p<0.05)。関節可動域測定の右膝関節伸展角度は安静時と比較し駆動後に差はなかった。回復後は安静時と比較し有意に拡大した(p<0.05)。左膝関節伸展角度は安静時と比較し、駆動後で有意に拡大した(p<0.05)。回復後は安静時と比較し差はなかった。10MWTは歩行時間、歩数で安静時と駆動後、回復後に差はなかった。

【結論】脳性麻痺両麻痺患者に対する10分間の下肢エルゴメーター運動は、下肢筋痙性を低下させた。10MWTでは変化はなかったが、脳性麻痺両麻痺患者が自発的に運動出来る機会を増やすことは有益であり、長期的に行うことで関節拘縮予防や運動機能向上に繋がると示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】本研究の実施にあたり、当センター倫理委員会で承認され、全ての対象者および未成年者においては、家族にも研究の目的、方法等を書面と口頭で十分に説明した上で、同意を得た。(承認番号:29‐3)

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© 2019 日本理学療法士協会
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