主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【はじめに、目的】
脳性麻痺児に対するホームエクササイズは、運動機能の向上・維持という観点で重要である。近年、ホームエクササイズにおいて、脳性麻痺児の日常の動作の運動強度を把握する必要性が述べられている。一般的に運動強度は一軸性加速度計で計測される。これは健常成人を元に設定されており、計測対象の身体組成等が異なる場合は、妥当性の検討が必要である。妥当性の検討には、呼気ガス分析で身体活動量の計測をする。脳性麻痺の場合、マスク装着は違和感が大きく、安定した動作の再現が困難なことが容易に想像される。そこで、歩行速度からMETsを算出する方法を利用して身体活動量を計測することを着想した。
今回の目的は、歩行速度での身体活動量計測を健常成人で実施し、その妥当性を検討することである。
【方法】
対象は,健常成人14名(年齢20.7±1.1歳、身長164.2±9.3㎝)である。コースは半径1.6mの円を隣合わせた八の字路(20m)で、3分間の歩行を行った。歩行は、自由歩行、減速歩行および加速歩行の3種類とした。なお、減速および加速歩行の速度設定は、自由歩行のラップタイムの平均値(秒/周)を20%増減したものとした。そのため、導入順序は自由歩行を最初に導入し、減速および加速歩行を無作為に選択した。一軸性加速度計は,生活習慣記録機ライフコーダGS(以下LC)(スズケン社製)を使用し、歩数と運動強度を計測した。装着部位は,臍から右側の上前腸骨棘を結ぶ線上の中間点とした。運動強度は4秒毎に1(低強度)から9(高強度)と9段階で評価される。歩行中に記録された運動強度を平均し代表値とした。歩数は各歩行で合計した。また、各歩行のラップタイムを平均した。歩行距離を計測し歩行速度(m/分)を算出した。
運動強度の指標として、Physical Activity Ratio(PAR)を採用した。まず、LCの運動強度の平均値から予測式を用いPARを算出した(LCPAR)。次に歩行速度からMETsを予測しPARを算出した(速度PAR)。
統計学的処理はSPSSver22を用いた。課題遂行評価として歩数・歩行距離・ラップタイムを反復測定による一元配置分散分析を行った。妥当性は、LCPARと速度PARとの相関関係をピアソンの相関係数と、両者の一致度をBland-Altman分析を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
反復測定の一元配置分散分析では、各歩行時の歩数・歩行距離・ラップタイムにおいて、各歩行間に有意差があった(p<0.05)。PARの相関係数は、r=0.82(p<0.05)であった。Bland-Altman分析では、系統誤差(信頼区間:-0.76~0.72,r=0.26,p=0.09)は認められなかった。
【結論】
今回の結果から、歩行速度から算出された運動強度が妥当性を有することを示している。このことは、臨床場面でより簡便に脳性麻痺児の運動強度を計測できる可能性を示唆しており、その有用性が考えられる。
【倫理的配慮,説明と同意】
大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科研究倫理委員会からの承認を得た(承認番号:2016-112)。対象者には事前に研究目的、運動課題等の説明を行い、書面で同意を得た。