理学療法学Supplement
Vol.48 Suppl. No.1 (第55回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-31
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シンポジウム
それでいいのか回復期の理学療法士
─回復期の理学療法士への警告─
大垣 昌之
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抄録

 脳卒中患者の疾病構造も,障がいの重度化や重複化など変化していく事に加え,病院機能分化,地域連携推進などの国の施策も進み,脳卒中患者の理学療法を取り巻く環境も大きく変化してきている。急性期医療機関(以下,急性期)および回復期医療機関(以下,回復期)においては,徐々に在院日数が短縮される中,限られた期間で在宅復帰を目指さなければならない。そのような中,早期からの立位,歩行練習において長下肢装具を含めた装具を使用する機会が増えてきている。2020年度の診療報酬改定において,回復期のリハビリテーション実績指数は37点から40点に引き上げられた。今後ますます在院日数が短縮していく事が予測される中,理学療法士として早期の立位・歩行練習において装具は欠かせない道具の一つである。

 回復期では,入院早期より作成する治療用装具と,退院前に,生活を見据えた生活用用具の二具を作成する場合も少なくない。装具の作成に関しては,理学療法士のみでなく,医師,義肢装具士などの多職種で検討するのが理想的であるが,多職種連携が出来ている施設はまだまだ少ない。

 当院の回復期で装具を作成された方が,退院時に装具を使用している割合は90%以上になる。多くの方が退院後も装具を使用されるが,多くの回復期に関わる理学療法士は,退院された患者のその後のことは知るすべもない。退院後,経過とともに下肢状態は変化し,装具も合わなくなる方が多くいる。また,装具が破損しても,そのまま放置されている方もおられる。いわゆる作りっぱなしである。そのことを回復期の理学療法士は認識した上で対応しなければならない。回復期退院後は,フォローアップも見越した指導が必要となる。

 回復期から生活期へ移行する際は,患者情報を要約し生活期にかかわる専門職に診療情報を提供しなければならない。診療情報の提供は,継続的な医療の確保,適切な医療・介護を受けられる機会の増加,医療,社会資源の有効利用を図るためにも重要である。特に装具に関する情報は,経過とともに希薄になりやすいため,装具作製目的や作製年月日,作製業者などを整理し情報提供することが望ましい。

 理学療法の効果は,急性期,回復期の退院時がゴールではない。退院時は障がいを抱えながら生活していく事のスタートである。在宅を含めて地域に戻られた後も継続的に豊かに生活が出来ているかが重要であり,理学療法士として退院後のアウトカムを確認しなければならない。特に医療機関の理学療法士に欠けている視点と感じる。

 本シンポジウムでは,急性期を含め,回復期と生活期の情報共有の在り方を考えるきっかけになれば幸いです。

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© 2021 日本理学療法士協会
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