抄録
2018 年の「IR 整備法」(特定複合観光施設区域整備法)成立以降、国内初の対面式カジノ開業に向けた動きが活発化した。多くの自治体が誘致活動を推進したが、最終的な候補としては、大阪府・市、長崎県のみとなった。有力候補として目されていた横浜市では首長交代によって、和歌山県においては議会議決によって、IR 誘致政策は消滅した。誘致に向けて、巨額の予算を計上したものの、なぜIR 誘致は実現しなかったのか。その背景を探ることを目的として論考を展開した。考察の結果、IRによる経済的効果を基軸として推進してきたこと、形式的には合意形成が図られたが市民を中心とした十分な合意形成が図られておらず、行政主導、行政先行の合意形成が通底していた。