抄録
障害者アートは2000年代以降、社会的に広く注目されるようになった。本研究では、「福祉と芸術」の視点から、障害者アートの展覧会開催や作品が政策との関連、波及効果について検討した。考察の結果、第一に、視覚、聴覚障害者など障害者が鑑賞者として展覧会に参加する際の支援の方略が整備される契機となった。第二に、アール・ブリュットの概念などを想起させて、障害者アートのあり方の模索がされる契機となった。第三に、作品価値に対して対価を支払うという、具体的な施策案が浮上して、既存の福祉と芸術の融合を超越する可能性の示唆が得られた。いずれの知見も、福祉と芸術の概念を共有しており、障害者アートにおいて、福祉と芸術は密接に関わることは明らかであるが、共生社会をふまえて、その関わり方については変容の時期を迎えていると考えられた。