地域活性研究
Online ISSN : 2758-1071
Print ISSN : 2185-0623
19 巻, 1 号
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  • 坂倉 孝雄
    2023 年19 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究は、地域での食品廃棄削減活動への住民参加を促すための知見を探るものである。そのような活動への参加を、環境配慮行動の一つと見做せば、その規定因に関して提唱されてきたいくつかの項目概念やモデルは有用だと考えられる。本稿ではまず当該分野の議論をレビューし、環境にやさしい行動に関する深い楽しみの概念の意味合いを確認した上で、地域の実証事業で回収されたデータを用いて、素朴な楽しさを重視する参加者の存在について検討した。認知や価値観の変容は参加を促す本質的に重要な要素であるが、実践面では汎用性や時間を要する点での難しさも示唆される。そこで、素朴な楽しさを訴求するフレームが、価値観変容に基づく参加促進フレームを補完する可能性について考察した。
  • 関係性志向の地域通貨プラットフォームを実証フィールドとして
    高尾 真紀子, 末吉 隆彦, 江上 広行, 磯崎 隆司, 保井 俊之
    2023 年19 巻1 号 p. 11-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究は地域活性化の文脈で近年台頭している、地域住民の地域着及び住民同士のつながりを強めることを目的とし、フィンテックを活用した地域通貨に着目し、このような地域通貨が地域住民を中心とする通貨使用者のウェルビーイングをどのように向上させるのか、その経路を可視化するとともにその効果を検証するものである。関係性志向の地域通貨プラットフォームを実証フィールドとして選定し検証した結果、このようなフィンテックを活用した地域通貨の利用が、地域住民の地域愛着と関連し、利他的動機やつながりを通じて、主観的ウェルビーイングを向上させる可能性が示唆された。
  • リビングラボを事例として
    西尾 好司, 平田 透
    2023 年19 巻1 号 p. 21-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    地域社会の振興につながるイノベーションプロセスにおいては、仕組みをどう形成していくのか、それを持続させる要因は何か、を明確にすることが重要となる。本研究においては、欧州で始まり世界的な広がりを見せているリビングラボの概念を基盤に、現実の活動実施主体に着目し、事例研究から中心的役割を担う主体による仕組みの違い、そこから導かれる持続のための課題は何かの把握を試みる。対象事例として「自治体主導型」「大学主導型」の比較分析を行い、地域住民を含めた関係者の主体的参加・相互連携の仕組みづくりと持続性確保の対応について考察する。
  • 原田 魁成, 九澤 賢太郎, 寒河江 雅彦
    2023 年19 巻1 号 p. 31-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    国土交通省が定義した、人口規模別に生活利便施設の存在できる可能性を示す「存在確率」に対し、本研究では施設数の観点からモデルの拡張を試みる。すなわち「あるサービス産業は特定の人口規模下で標準的に何店舗存在できるか」を明らかにする。分析には人口数及び当該産業の事業所数データを使用し、対数多項式モデルで近似を行った。その結果、理容業や保育所等は人口規模が1,000人であっても複数店舗の経営が可能とされるが、ハンバーガー店は30,000人程の人口規模が必要であった。また歯科診療所や焼肉店を例に施設偏在性を示した。本研究成果は新店舗立地や圏域構想に基づく施設の再編等にて、適当な施設数を測る簡易的な目安として活用できる。
  • ―子育て支援を事例に―
    池田 寛之
    2023 年19 巻1 号 p. 41-50
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    日本の大半を占める普遍的事例として、中小規模の私立大学である本学、一般自治体として大阪府守口市と門真市を取り上げる。官学連携の実質化を課題とし、インフォーマルな課題設定や解決、相互学習、相互変容のプロセスを通じて、自学の特色を活かして地域課題に参画し、教職員や学生が地域の魅力を発見し、「地域で学び、暮らし、自信と誇りを持って生きていく」ことの価値を、実務的な観点から具体的に明らかにした。また、ソーシャル・キャピタルの分析から、「こども・子育ての未来に向けて地域連携で取組む子育て基盤づくり」は「地域連携・拡張型」と分類した。
  • 今永 典秀
    2023 年19 巻1 号 p. 51-59
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    Covid-19の影響を受け、テレワークが推進され、多様な人々との交流の機会を創出する共創の場の価値が増加している。地域における関係人口に関しても同様であるが、オンライン環境を活用した共創の場に関する知見の蓄積は少ない。そこで、本研究では、Cue Dream Projectを題材とし、アクションリサーチおよびテーマオーナーに対するインタビュー調査とテキストマイニングを活用し、オンライン共創空間の可能性を考察した。複数のテーマオーナーの個人の想いを中心とし、多数の人が集まることで、特定のサイトから情報発信され、展開される。オンライン環境を活用した共創の場を活用し、地域のアクターと協力したイベントを創造することにより、時間や場所の障壁を越え、交流や協働の機会が生まれることが確認できた。
  • ―福井県大野市の事例より―
    今村 智子
    2023 年19 巻1 号 p. 61-69
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    住民が主体となり自立した地域づくりを継続していくため、望ましい行政支援内容と関与の程度について明らかにする。本研究では、活動を継続している団体と活動が低調・休止している団体の構成員に行政の関与に関するアンケートを実施し、両者の違いについて統計的手法を用い分析した。結果、関与が望ましい内容として、地域のニーズの把握、先進事例等の情報提供、広報の協力、サポート体制の構築等、関与しない方が望ましい内容として、現場の作業と指示、地域の権力構造の把握、地域資源の指定等であることが明らかになった。また、関与の程度として、行政は外部者の立場から、団体の自立した活動を支援する程度が望ましいということが確認された。
  • 大西 昌子, 浅井 義文, 岡山 大成
    2023 年19 巻1 号 p. 71-80
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    伊勢市においてガソリンスタンドを営む株式会社油米は、大きな決断の時を迎えている。新規事業に乗り出す大世古店と、ガソリンスタンドを継続する神久店では、その運営方法が異なる。このような状況下において、経営改革を進めるためには、会社としての方針を定め、適切に現場統制していく必要性がある。KPIマネジメントを中心とした油米独自の経営管理のあり方を、Aby式3Kオペレーションとしてまとめ報告する。
  • ~香川県東かがわ市五名地区での事例より~
    長尾 敦史, 那須 清吾
    2023 年19 巻1 号 p. 81-90
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    ビジネス創造が難しい中山間地域における地域ビジネスの創造プロセスには、ビジネスの始まりから発展、拡大の各段階で各プレーヤー間の関係性の構築、ビジネスマインドを持たない地域住民が知識の獲得と意識の変化などが必要となる。本研究ではSECIモデルと生態学的変化に着目し、香川県東かがわ市五名地区で実践活動に基づき事例分析を行った。
  • 平見 尚隆, 土井 隆ノ介
    2023 年19 巻1 号 p. 91-100
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本稿では地域活性化のための新たなアプローチとして、通常「迷惑施設」と見なされている地域特有の資源を価値ある空間に変換する方法について考察する。「ごみ処理施設」等の利用困難な施設の再活用から四段階モデル「隔離」「付加」「共存」「融合」を提示し、これらが地域共同体に対する資産としての価値を再構築する過程を考察する。続けて、各地の競輪場におけるその活性化の施策を検討し、本モデルの適用とその結果に基づき、提示理論の妥当性を検証する。その後、具体的なケーススタディとして高松競輪場を取り上げ、この迷惑施設の地域社会への一体化が可能か、アンケートを通じた調査を試みた。
  • -伝統工芸に焦点をあてた調査分析-
    譚 謙, 黄 孝春, 内山 大史
    2023 年19 巻1 号 p. 101-110
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    地域資源を活用した地域活性化の取組みを進めることを目的に、伝統工芸に焦点をあて、購入動機として設定した11の評価基準の優先度について一対比較分析を用い明らかにした。男性女性ともに、機能性に関する優先度が高く、情緒性に関しては低めという結果であった。メーカーまたはブランドの信頼性は「情緒的」基準と同様の値を示したが、男性においてメーカーまたはブランドの信頼性に対する優先度が高い傾向がみられた。また、工芸への興味の高さに従い「独自性がある」「センスが良い」ことへの優先度が高まること、工芸に興味がない場合は「コストパフォーマンス」の優先度が高まることを示した。
  • 上田 真弓, 明石 達生, 池田 菜美
    2023 年19 巻1 号 p. 111-117
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究は、街なかのカフェが有するサードプレイスとしての機能を利用者にとっての①「交流の場」②「心の拠り所」の2つの観点から捉え直し、利用者の意識と心の状態から以下の事を解き明かした。①カフェを交流の場として利用している人と特定のカフェを心の拠り所としている人はどちらも4割前後確認された②カフェを仲間との交流の場や心の拠り所とする人は、心の健康状態が顕著に良好であった。特にカフェを心の拠り所とする人は、ウェルビーイングの計測値が顕著に高かった➂カフェを仲間と交流する場に利用している人は、地域の愛着度が顕著に高く良好な人間関係を形成していた。また自己肯定感も高く幸福感の高い生活を送る傾向があった。
  • ー石川県を事例としてー
    九澤 賢太郎, 原田 魁成, 寒河江 雅彦
    2023 年19 巻1 号 p. 119-127
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究では住民からのニーズの高い生活利便施設の充実度の視点から「住みやすさ」について分析した。具体的には、石川県を事例としてメッシュ単位で徒歩到達圏における施設の充実度を定量化し、その生活機能を4 つのクラスターに分類して考察した。その結果、若中年層が多い金沢市・野々市市などの地域では徒歩圏内における施設充実度が高い居住メッシュのカバー率が高い。一方、超高齢化の進む奥能登地域では徒歩圏内の生活利便性の低さが課題として浮かび上がった。本分析に用いたデータは入手可能な公開情報であり、また汎用性のある分析手法のため他地域でも同様の分析が可能である。
  • ―しずおか自動運転ShowCASEプロジェクトの取組みから―
    小菅 謙次
    2023 年19 巻1 号 p. 129-138
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    ドライバー不足がボトルネックとなる中、高齢者等の移動手段の確保策として期待される自動運転システムには、安全性、採算性、柔軟性が重要で、安全面では2023年4月施行の改正道路交通法で同乗者なしの遠隔監視でよいことになった。採算面では遠隔監視(1対多)が有効で、福井県永平寺町はこれを誘導方式で実施している。ただし、より柔軟なまちづくりには非誘導方式が好適で、静岡県はこれに加えデジタルツイン整備で正確性と効率性を確保し、自動運転に一定の方向性を示している。本稿では静岡県の事例から、公共がデジタルインフラを整備し広域的に導入することで経済的ハードルを下げ、高齢者の移動問題への政策的意義が高まると結論づけた。
  • 神野 訓子, 那須 清吾
    2023 年19 巻1 号 p. 139-148
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    政府における産業集積政策が、紙パルプ産業集積に及ぼす効果を定量的かつ視覚的に把握する。具体的には、1900年以降の地域振興・産業集積政策を概観した後、本研究の対象政策であるクラスター政策について経営効果と創業効果を分析する。経済産業省「工業統計調査」の個票データを用いて、相関分析・DID分析を行う。経営効果を示す指標、創業効果を示す指標を被説明変数とし、説明変数はクラスター対象期間ダミーであり、その係数はクラスター事業参加の効果を示す。それぞれの分析モデルに仮説を設定し推定結果を導き、クラスター政策が紙パルプ産業集積に及ぼした経営効果を考察する。本研究の分析対象として、紙パルプ産業集積を取り扱う。
  • 薗 諸栄
    2023 年19 巻1 号 p. 149-158
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染拡大防止への対応を契機に都市部の労働者が地方で働きながら休暇を過ごすワーケーションが注目を集めている。本研究では、2022年度にワーケーション自治体協議会に参加している212の自治体を対象にアンケート調査を実施した。本研究の目的は自治体のワーケーション事業の現状、他主体との連携、中間支援組織の存在、補助金の活用、事業の課題と展望を明らかにするとともに、自治体におけるワーケーション支援の政策的な示唆を検討する。研究結果として、自治体は地域の課題を解決、従業員の福利厚生を重視することを目的としたワーケーションプログラムを実施していることが明らかになった。
  • -北海道における12自治体の事例研究を通じて-
    薗 諸栄
    2023 年19 巻1 号 p. 159-168
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究は、自治体のワーケーション事業に関して北海道の12自治体を事例とし、ソーシャル・キャピタルの観点から、以下の3つの視点を設定して考察を行ったものである。第1にワーケーション事業による地域外との連携(連携型)、第2に地域内の地場企業・組織・人との連携や関係性 (結束型)、第3に地域内と地域外との人の繋がりの橋渡しすることを重視する (橋渡し型)という視点から、自治体のワーケーション事業の特徴や課題を明らかにしている。また、他の自治体がワーケーション事業に取り組む際の政策的示唆の導出を併せて試みたものである。その結果、これら3つの視点からの分析が、ワーケーション事業の効率的、効果的実施に有用であること等が明らかになった。
  • 都丸 孝之
    2023 年19 巻1 号 p. 169-178
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、神奈川県小田原市を対象にみかん畑の耕作放棄地を整備した農地を有効活用することを目的に、無農薬レモンを生産した際の柑橘生産の事業採算性をファイナンスの理論である正味現在価値法NPV を用いて検証した。無農薬レモンと農薬を使用した通常のレモンを生産した際にどの程度、収益に差がでるのかを検証するために首都圏在住の消費者にアンケートを行い無農薬レモンの支払意思額、WTP (willingness to pay)を調査した。その結果、かんきつかいよう病やすす病による表皮の汚れなどが発生し生食用として販売できないレモンの生産リスクを割引率として設定した場合、割引率が20%であれば無農薬レモンは農薬を使った通常のレモンの6.3 倍もの収益が得られるが、割引率が40%以上になると農薬を使った通常のレモンの方が、収益性が高くなることが判明した。
  • ―中山間地域の小規模農業関連事業者に着目して―
    藤井 美紀, 保永 展利
    2023 年19 巻1 号 p. 179-188
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究は、中山間地域において新規に参入・開業した農業関連事業者の起業家的志向と事業ネットワークの形成要因を明らかにすることを目的とした。島根県浜田市に立地している株式会社Kの起業者・店長への聞き取り調査等によって得られたデータをもとに、事業の主要人物がどのようなライフヒストリーの中で起業家的志向を持っているのか、地元の事業者とどのように連携して事業が成り立っているのかといった中山間地域での小規模農業関連事業の特性を定性的に分析した。その結果、事業拡大には慎重な志向が確認されるとともに、川上・川下のブランド形成を含めた市内外の取引関係の構築や地元農家との商品づくりの関係が中山間地域で事業継続できている要因となっていることが明らかになった。
  • - マーケティングの視点から -
    劉 利, 野田 博行, 高澤 由美, 小野 浩幸
    2023 年19 巻1 号 p. 189-197
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    高齢化および高齢者の介護は既に中国では大きな課題となっている。2025年までの介護保険制度の全国導入の実施とともに、中国政府は「在宅を基礎とし、社区(コミュニティ)を拠り所とし、介護施設がそれを補う」という介護サービスシステムの構築を提唱している。在宅介護サービスを基礎とする方針は、「高齢者が可能な限り住み慣れた地域で介護サービスを受ける」という日本の地域密着型介護サービスの理念と共通している。 本研究は、マーケティングの視点から高齢者の介護サービスの方向性に関する戦略的な示唆を得ることを目的とする。北京大学が中国全国で行なった「CHARLS中国健康和養老追踪調査」を用いて、在宅介護、社区介護、施設介護という三つのサービス方式の利用割合を明らかにした上、消費者行動論に基づき各介護サービス方式利用の影響要因を分析した。その結果、在宅介護サービスの利用は過半数を超え、介護ニーズが最も大きいということが明らかとなった。また、クロス分析で、年齢、収入は介護サービス方式の選択において、統計上有意な影響因子であることが分かった。年齢が高い、収入が高い高齢者は在宅介護サービスを利用する傾向がある一方、年齢が低い、収入が低い高齢者は施設介護サービスを利用する割合が高い。それぞれの高齢者の特性に対応するマーケティングの方向性を提示した。
  • -「いちななまるしぇ」の実践を通じて-
    大池 淳一
    2023 年19 巻1 号 p. 199-206
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    高等学校商業科では科目「商品開発と流通」「総合実践」「課題研究」等の授業において、地元企業と連携した商品開発をおこなってきた。しかしながら、その学年の販売実習で販売して終わる等、商品開発が一過性であることが多く、持続可能な商品開発に繋がっているとは言い難い。また昨今では商業科のみならず、普通科や他の専門高校、中学校においても「総合的な探究の時間」等を活用して商品開発実習を行っているが同様の傾向がみられる。本稿では、持続可能な商品開発実習を目指し、岡山県立倉敷鷲羽高等学校ビジネス科が取り組んだ実践について事例報告を行う。
  • 大木 美穂, 齋藤 篤, 岩垣 穂大, 扇原 淳
    2023 年19 巻1 号 p. 207-215
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    2020 年初頭から発生した新型コロナウイルス感染症の流行(以降コロナ禍)の影響により、日本全国の祭りが開催中止となった。一方で、規模を縮小して開催したケースや、オンライン環境において開催するケースもあり、祭りの開催について、主催者や地域住民の考え方によって判断の違いが見られた。本研究では、コロナ禍における祭りの開催状況について整理するとともに、祭り中止に対する関係者や住民の思いについて聴取し分析した。地域の伝統継承やソーシャル・キャピタル醸成とも関連のある祭りの中止は、地域住民や関係人口に負の影響を及ぼす可能性があると考えられる。したがって、コロナ禍においても祭りを継承していく上では、過去から受け継いだ伝統を守りつつも、時代の状況に合わせて、開催形態を含めて柔軟に変化させていくことが必要だと思われる。
  • 佐々木 公之
    2023 年19 巻1 号 p. 217-226
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    2020年より3年間にわたり、岡山市に拠点を置く大学の学生が、ゼミナールでのPBLを通して中山間地域の一つである久米南町下籾地区にて新商品開発、PR動画制作などの地域活性化を目的とした活動を行った。本稿は、この3年間の活動を振り返ると共に、この活動が下籾地区の地域活性化や学生の社会人基礎力の成長にいかに繋がったかを検証し、実施する上で重要となった要素について考察するものである。検証の結果、このPBLが下籾地区の地域活性化に貢献していることが関係者からのインタビューから明らかとなった。また、この活動の成功要因として、リーダー学生の下籾地区への想いや久米南町役場の支援体制などが重要な要素となっていると考察した。
  • 〜総社デニムマスクPRの取り組み〜
    髙橋 俊臣
    2023 年19 巻1 号 p. 227-236
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、総社市の地域活性化イベントにおけるPRの手法を考察し、その効果を明らかにすることである。超少子高齢化かつ大都市部への人口集中化を背景に、地方はまちづくりをマーケティング視点で取り組む必要がある。その中でもPRは外部へ短期的に魅力を発信することができる。戦略的に行うことで効果が期待できることから活性化への寄与は大きい。本研究ではまず、地域活性化イベントについての先行研究調査と手法についての考察を行った。そして、筆者の広告現場での実務経験を活かし、総社デニムマスクの戦略的なPRを実践し、効果測定を行った。
  • ~地域づくりに関する住民意識調査より~
    長尾 敦史
    2023 年19 巻1 号 p. 237-245
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    香川県東かがわ市A地区では住民が組織化したコミュニティ協議会を基礎とした地域づくりが行われている。これまでコミュニティ協議会では、コロナ禍でありながら活動を行ってきたが地域ニーズを捉えられているとは言い難い。またコミュニティ協議会では東かがわ市の他地区同様に地域計画の策定を予定しており、地域住民を対象にしたアンケート調査が基礎的な資料となる。そこで本事例報告ではインタビュー調査やアンケート調査をもとに住民意識調査を行い、住民主体の地域づくりにおける課題抽出を行う。
  • 温泉知サロンと温泉知ワークショップ
    中嶋 克成, 寺田 篤史, 赤木 真由, 鏡 裕行
    2023 年19 巻1 号 p. 247-254
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    2022年に「温泉を学ぶ・温泉で学ぶ」をモットーとして「温泉知」というキーワードを掲げて「温泉知研究会」を結成、環境省の取組である「チーム 新・湯治」の一員として活動を始めた。「温泉地×学知」をテーマに地元大学を温泉地の魅力を高める資源として活用する新たな観光コンテンツを考案、令和4年度の環境省「新・湯治の効果に関するコンテンツモデル調査」に採択された。本稿は、このコンテンツモデル調査の舞台となった旅館経営者へのインタビューを通じて実施した2つの観光プログラムの「コンテンツモデル」としての価値を検討した。
  • ~淡路島を事例として~
    永野 聡
    2023 年19 巻1 号 p. 255-263
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    世界的な社会課題として脱炭素が叫ばれている。その解決策として、グリーンリカバリーの取組みが注目されている。そこで本研究では、循環型経済・生物多様性等に配慮しながら、地域課題の解決に取組む人材(GX人材)に着目する。このGX人材を大学が主体となり、企業・自治体・地域住民と連携し、育成していく事を目標としている。そこで、本研究では、GX人材の育成方法に関する評価スケールの開発と効果検証を行う事を目的とする。GX人材の育成に関して、18のスキルでの成長を計るプログラムを開発し、効果検証を実施した。その結果、企業・自治体・地域住民との連携した活動を多く実施したグループが高い評価となる結果となった。
  • -障害者アートは誰のものか-
    福井 弘教
    2023 年19 巻1 号 p. 265-274
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    障害者アートは2000年代以降、社会的に広く注目されるようになった。本研究では、「福祉と芸術」の視点から、障害者アートの展覧会開催や作品が政策との関連、波及効果について検討した。考察の結果、第一に、視覚、聴覚障害者など障害者が鑑賞者として展覧会に参加する際の支援の方略が整備される契機となった。第二に、アール・ブリュットの概念などを想起させて、障害者アートのあり方の模索がされる契機となった。第三に、作品価値に対して対価を支払うという、具体的な施策案が浮上して、既存の福祉と芸術の融合を超越する可能性の示唆が得られた。いずれの知見も、福祉と芸術の概念を共有しており、障害者アートにおいて、福祉と芸術は密接に関わることは明らかであるが、共生社会をふまえて、その関わり方については変容の時期を迎えていると考えられた。
  • 正本 英紀
    2023 年19 巻1 号 p. 275-284
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー
    愛媛大学においては、地域協働センター西条の開所に対応した地域発の履修証明プログラムである「地域創生イノベーター育成プログラム(東予)」を2017年度から実施していたが、実施後相当の期間が経過しており、受講者数の減少に伴い新たなプログラム創出の必要が出てきていた。2021年に地域専門人材育成・リカレント教育支援センターの専任教員として着任した筆者により、「ソーシャルイノベーターの育成」を掲げ、23名の外部講演者を招聘したほか、プログラムの刷新を図ることで、当初定員を上回る受講者数31名(開講時)の参加を得るなど、開講時の趣旨に基づく人材育成を実施することができた。
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