抄録
本研究は、高齢者のレジャー行動の一環であるギャンブル行動の実態を性差に焦点をあてて明らかにすることを目的とした。首都圏在住の高齢者1044名に対する調査の結果、高齢者全般に関する知見としては、1)ギャンブル行動はレジャーのなかで特異な位置づけではあるが障壁は高くない。2)ギャンブル行動が多様な条件下(目的)を契機としても、ギャンブル依存症に罹患する可能性があるという示唆が得られた。3)ギャンブル行動において、他者との「交流」は必ずしも重視されていないことが示唆された。4)参加要因の主流は、「儲かる可能性がある」ことから参加していたことが、自由記述回答からも明らかとなった。通常、レジャー行動は金銭を消費することはあっても増加することはないが、ギャンブル行動においては、金銭を増やせる可能性を含意している。それがギャンブルの魅力であるといえよう。他方、性差に関する知見としては、1)活動的であるのは男性だが、ギャンブル志向が強いのは女性であった。男性は「儲け」を重視して参加するが、女性は儲けを重視するわけではない。女性の方が「儲け」、「金銭」に執着しないという示唆が得られた。2)女性は、男性と比較するとギャンブル依存症に罹患しづらいことが示唆された。地域活性化に資する適切なレジャー行動に向けては、自身の経済事情などに合わせた金額を設定するなど事前の対策を網羅することで依存症などの問題行動への架橋は遮断される可能性があると考えられた。