日本口蓋裂学会雑誌
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口唇裂・口蓋裂における遺伝外来受診の効果に関する検討
中新 美保子山内 泰子篠山 美香三村 邦子佐藤 康守森口 隆彦稲川 喜一
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2013 年 38 巻 1 号 p. 120-127

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抄録

近年,口唇裂・口蓋裂のチーム医療に遺伝専門職の参加を必要とする声が聞かれるようになってきた。今回,2009年10月から2010年12月の期間に,遺伝外来を受診した非症候群性の口唇裂・口蓋裂患児の母親26名を対象に,半構成的質問票による聞き取り調査を実施し,遺伝外来受診の効果と今後のあり方について検討した。
母親は,患児のみならず同胞の将来の子どもや次子への再発率,その原因や予防法等多くの遺伝に関する心配事を抱えていた。しかし,7割の母親は誰に聞いてよいかわからない等の理由から医療者に尋ねていない状況があった。そして,これらの情報を妊娠中や出産直後の早い時期に提供してほしいと希望していた。
今回の積極的な遺伝外来受診の効果については,「役立った」は24名(92.3%),その理由は,(1)遺伝に関する情報(再発率・予防法)を得た(2)母親の精神的サポートになった(3)遺伝情報を聞ける場所の知識を得た(4)情報の整理になった,であった。これらの母親は,遺伝外来について他者に「勧める・伝える」と回答した。「役立たなかった」は2名(7.7%),その理由は,新しい話が聞けなかった事であった。遺伝カウンセリングの方法や継続支援の必要性が課題となった。
我々は今回の調査結果から,病状説明用リーフレットを改訂し,遺伝カウンセリングの存在や受診方法等を明記した。現在,リーフレットを用いて口頭でも説明を行っている。遺伝に関する事柄はデリケートな問題であり,必要時には遺伝専門職との情報交換を行い,治療段階における患児や家族の表情や言動に心を寄せ,適切に働きかけることに努めている。患児家族の生活を視野に入れた支援が求められる時代になってきた。チーム医療においては遺伝に関する支援の充実が必要であり,遺伝専門職との連携構築が望まれる。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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