日本口蓋裂学会雑誌
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シンポジウムII
片側唇顎口蓋裂に対する早期二期的口蓋裂手術の有用性と問題点
西尾 順太郎平野 吉子峪 道代並川 麻理山西 整小原 浩
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2013 年 38 巻 1 号 p. 42-53

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抄録

【目的】口唇口蓋裂に対する口蓋裂手術の至適時期や術式に関して,今なお多くの議論がある。音声言語機能と顎発育の両面を充足する治療法として,早期二期的口蓋裂手術プロトコールが最近注目を浴びている。本研究では早期二期法適用例における顎発育や言語成績がpush back法適用例のそれらより優れているか否かについて検討した。
【方法】非症候性口唇口蓋裂患者77人が研究対象である。一つは生後12ヶ月時のFurlow法による軟口蓋閉鎖と,18ヶ月時の硬口蓋閉鎖からなるETS群と生後12ヶ月時のpush back法による一期的口蓋裂手術を受けたPB群に大別された。上下顎石膏模型分析,セファロ分析および言語評価が4歳時,8歳時に行われた。
【結果】4歳時における上顎歯列弓の前後径および幅径はETS群ではPB群に比して有意に大であった。5-Year-Old Indexを用いた咬合評価では,ETS群では48.2%が咬合良好と評価されたのに対し,PB群では8.0%が咬合良好と評価されたに過ぎなかった。セファロ分析ではETS群およびPB群とも,non-cleft群に比して,上下顎とも前頭蓋底に対して後方位にあった。ETS群ではPB群に比して,上顎前後径が有意に大であり,口蓋平面がより急峻であり,下顎骨体長が短く,かつ,良好な上下顎関係を示すことが明らかとなった。言語面に関しては,鼻咽腔閉鎖不全や構音異常の頻度に両群間に差はみられなかった。
【結論】早期二期法は言語機能を損なうことなく,良好な上下顎関係をもたらすプロトコールであることが示された。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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