日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
シンポジウムII
Orthodontic Treatment for Patients with Cleft Lip and/or Palatein the University of Tokyo Hospital
須佐美 隆史大久保 和美井口 隆人岡安 麻里内野 夏子上床 喜和子高橋 直子髙戸 毅
著者情報
ジャーナル 認証あり

2013 年 38 巻 1 号 p. 54-61

詳細
抄録

この20年間に口唇裂・口蓋裂患者に対する顎裂部への骨移植術や上顎骨延長を含めた顎矯正手術の結果が安定してきた。一方,予知性が高く,効率的な治療が世界的に強く求められるようになっている。東大病院における矯正歯科治療も,かつては上顎を拡大し治療後に補綴処置を行うことを考えたが,現在は上顎を出来るだけ拡大せず,最小限の補綴処置で治療を終了することを目標としている。術前顎矯正治療にはnasoalveolar molding plate (NAM)を用い,顎裂部への骨移植は乳歯列後期に行うことが多い。矯正歯科治療は原則として混合歯列前期に開始し,リンガルアーチとセクショナルアーチを基本装置とする。上顎前方牽引もしばしば行うが,その長期効果は予測困難なことに注意を要する。永久歯列期ではマルチブラケット装置を用い上顎第二大臼歯を含めた治療を行う。上下顎関係の著しく悪い症例では顎矯正手術が必須であるが,境界症例でも手術を推奨する。口蓋裂を伴う症例では側切歯や小臼歯の抜歯が必要なことが多く,犬歯の近心移動により顎裂部の空隙を閉鎖する症例が多い。一方,唇顎裂では必要に応じ歯冠修復を行い側切歯を配列することが多くなっている。保定は上顎前歯舌側のワイヤー固定と床装置を用いて行い,可能な限り長期間行う。顎裂部に空隙の残存する症例では,近年接着ブリッジを多用している。こうした治療の多くは,初回手術の改善により口蓋形態や上下顎関係が改善すれば不要となる可能性が大きく,変化が期待される。

著者関連情報
© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事 次の記事
feedback
Top