日本口蓋裂学会雑誌
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原著
顎裂部への二次的腸骨海綿細片骨移植術後の咬合構築における検討
新垣 敬一天願 俊泉牧志 祥子仲間 錠嗣後藤 尊広仁村 文和幸地 真人比嘉 努狩野 岳史砂川 元
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2013 年 38 巻 1 号 p. 97-103

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抄録

【目的】顎裂部骨移植の目的の一つは,顎裂および瘻孔を閉鎖し,歯槽骨の連続性により側切歯(犬歯)の自然萌出あるいは歯科矯正治療または補綴治療により良好な咬合を構築することである。しかし,術後における移植骨の吸収の様相は様々で,本来の目的を達成しない症例も散見された。今回,当科で施行した骨移植後の咬合構築に至る移植骨の経過を評価し,今後の臨床に寄与することを目的に検討を行った。
【対象および方法】骨移植を施行した202例のうち,咬合構築のための最終治療(歯科矯正,補綴治療)が終了し,検討に際し資料が十分であった132顎裂を対象とした。術後6ヶ月後の骨架橋評価に使用したEnemarkの分類を用いて顎裂部の状態と最終治療法について検討を行った。
【結果】
1)Enemark分類別の歯槽骨の状態としては,Level-1が55顎裂,Level-2は50顎裂,Level-3が23顎裂,Level-4が4顎裂で,歯の誘導が可能なLevel-1,2は105顎裂(79.6%)であった。
2)骨移植後の咬合構築は,歯の自然萌出および矯正治療のみが56顎裂,歯科矯正治療による該当歯の誘導は41顎裂で,欠損補綴に頼らないのは97顎裂73.5%であり,欠損補綴治療が必要であったのは35顎裂26.5%であった。
【結論】犬歯萌出前に骨移植を行った91.7%がLevel-1,2と良好であり,さらに骨移植術後はLevel-1,2において86.7%が欠損補綴治療なしに咬合構築されていることより,骨移植時期が成否の要素となることが示唆された。

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© 2013 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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