抄録
先天性口唇瘻孔はまれな先天性疾患であり発生頻度は0.001%といわれている。発生部位は下口唇に多いが,上口唇に生じるものは極めてまれとされている。また他の先天異常を合併することが知られており,先天性口唇瘻孔の部位とその他の先天異常の有無に着目した分類が存在する。症状はさまざまであるが無症状で経過することも多い疾患である。われわれは上口唇正中に生じた口唇瘻孔の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例は17歳男子。生下時より上口唇の正中に陥凹を認めており,0歳時に上口唇の凹みが大きく腫脹し,某形成外科で口腔内から切開ドレナージを受け消褪した。その後は,しばしば分泌物を認めたとのことであった。17歳になり審美的障害を感じ当院外来を受診した。局所麻酔下に摘出し良好な結果を得た。