日本口蓋裂学会雑誌
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症例
シースルー型眼鏡デバイスを用いたAR(拡張現実)技術による外鼻形成術
大槻 祐喜廣田 友香光野 乃祐上田 晃一
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2018 年 43 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

近年,AR(augmented reality)技術を手術ナビゲーションへ応用した報告が増えつつある。AR技術は従来,工学系分野の高度な技術が必要となっていたが,技術の進歩により,比較的安価な汎用デバイス及びフリーソフトでもAR技術を用いることが可能になってきている。今回我々はシースルー型のスマートグラスを用いたAR技術を利用し,唇裂の外鼻形成術を行ったので報告する。症例は市販の眼鏡型デバイスを用いたAR技術を利用し片側唇裂に対して二期的に外鼻形成術を行った2症例である。術前に患者の3D画像撮影装置(VECTRA H1)から得て加工した3D画像を,EPSONの透過型スマートグラスMOVERIOを用いて実際の術野の顔面に重ねて立体視させた。3D画像はそれぞれ術前の外鼻の3D画像と,対側鼻翼を参考に作成した矯正後の外鼻の3D画像の2種類を用意し,表示切り替えすることで,術中に術前の外鼻形態との比較,術後目標とする外鼻形態との比較などができるようにした。2症例ともに術中に予め用意したMOVERIO内に表示される3D画像を確認し,手術を行うことができ大変有用であった。現時点では実際の体表の画像との位置合わせの誤差,タイムラグ,デバイス自体の視野の狭さなどの改善すべき点があるが,デバイスの更なる発展なども見込まれ,さらなるAR技術補助下の手術が発展していくことが期待される。

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© 2018 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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