日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
統計
東京歯科大学千葉病院における両側性唇顎裂・唇顎口蓋裂患者に対する矯正歯科治療の実態調査
齋藤 朋子水野 高夫吉野 直之石井 武展坂本 輝雄野嶋 邦彦末石 研二
著者情報
ジャーナル 認証あり

2019 年 44 巻 1 号 p. 7-15

詳細
抄録

東京歯科大学千葉病院に1981年から2014年までの過去33年間に来院した顎裂を伴う患者のうち,非症候性の両側唇顎裂(BCLA)・唇顎口蓋裂(BCLP)患者について,実態を把握する目的で臨床統計調査を行い以下の結果を得た。
1,顎裂を伴う患者955名に対しBCLA/P患者は88名(9.3%)であり,うちBCLAを有するもの12人(1.3%),BCLP76人(8.0%)であった。
2,性別は,男性49人(55.7%),女性39人(44.3%)であった。うち,BCLAでは男性7人(58.3%),女性5人(41.7%),BCLPでは男性42人(55.3%),女性34人(44.7%)であった。
3,PhaseⅠから開始した患者39名の初診時平均年齢は8歳8ヶ月,PhaseⅡから開始した患者26名の初診時平均年齢は17歳9ヶ月であった。
4,ほぼ全ての対象者が前歯部または臼歯部にcrossbiteを有しており,その中でも全顎的(前・臼歯部両方)にcrossbiteを示すものの割合が64.2%と多かった。
5,セファロ分析を用いた骨格的な形態学的特徴として,BCLA/Pでは上下顎の前後的な関係について顎裂を伴わず正常咬合を有する者と差異を認めなかった。また,歯性の特徴については,上顎前歯歯軸の著しい舌側傾斜と前歯部の逆被蓋を認める傾向にあった。
6,PhaseⅠでは,ほとんど全ての症例において前方または側方拡大またはそれらの併用にて治療が行われていた。
7,PhaseⅠまたはⅡにて顎間骨整位術が行われている症例は7症例(10.8%)であった。
8,PhaseⅡにおける治療内容については,PhaseⅠから治療を開始した群がPhaseⅡから治療を開始した群と比較し抜歯を伴う矯正治療,外科的矯正治療を行った割合がともに少なかった。治療期間と来院回数については,有意差を認めなかった。

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本口蓋裂学会
前の記事 次の記事
feedback
Top