抄録
【緒言】2020年に全世界に広がったCOVID-19は飛沫感染することから人と人の交流を制限せざるを得ず,言語治療の現場にも大きな影響を及ぼした。外来通院が制限され,対面治療においてもマスクやフェイスシールドを装着して患者と距離をおくなど,直接口腔内を観察して構音訓練を実施することが困難になった。こうした状況の中で,治療を継続する方法として遠隔治療(telepractice)の導入を検討する施設が増えている。
【目的】本研究の目的はEPGを用いた構音の遠隔治療の実際を報告し,COVID-19禍や遠隔地居住により言語治療を受けられない症例に対して,継続可能な構音訓練の方法を提案することである。
【対象および方法】対象は唇顎口蓋裂術後,側音化構音や後方化構音など特異な構音操作が残存している7歳〜17歳の4症例である。2症例は遠隔地居住のためCOVID-19以前に遠隔治療を取り入れ,2症例はCOVID-19以後にビデオ通話アプリを用いて週1回30分の構音訓練を遠隔で実施した。EPGの簡易トレーニング装置(PTU:Articulate Assistant Ltd., Edinburgh)あるいはタブレット型EPG(STARS:Asahi Roentgen Ltd., Kyoto)を貸し出すことにより,遠隔でも口腔内の舌と口蓋の接触を確認し視覚的フィードバック訓練を実施することができた。これらの装置は自宅での自己練習にも活用した。
【結果および考察】10回から30回の遠隔治療により,特異な構音操作は改善し会話明瞭度も向上した。遠隔治療のメリットは,様々な理由で通院が困難な症例に頻回な言語治療を提供できることである。特に構音障害の改善には定期的な訓練を継続する必要がある。また,遠隔治療にEPGを導入したことにより,ビデオ通話においても口腔内の舌と口蓋の接触状態を確認することができた。EPGはCOVID-19感染予防のため口腔内の観察が困難な対面治療でも役立つと思われる。