日本口蓋裂学会雑誌
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症例
リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体(OCP/Col)埋入顎裂部に形成された骨架橋への犬歯萌出症例
松井 桂子髙橋 哲川井 忠野上 晋之介山内 健介
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2022 年 47 巻 1 号 p. 45-53

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抄録

口唇裂口蓋裂患者の顎裂骨欠損を閉鎖する際,自家骨採取のための二次的外科侵襲が回避可能な,骨代替材料単独使用による治療が望まれる。今回,東北大学発の骨再生材料リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体(OCP/Col)を顎裂症例に応用し,術後の咬合管理上,自家骨移植と同等な治療効果が得られたので報告する。
患者は左側唇顎口蓋裂の男児。7歳10ヶ月時,永久犬歯未萌出で顎裂部へOCP/Colを単独埋入した。術後3年,10歳10ヶ月時に犬歯が口腔内に自然萌出し,通常の歯科矯正治療により上顎の歯列排列治療を行った。
OCP/Colを埋入した顎裂部において,永久犬歯萌出に伴い,術後3年をかけて骨再生が進行し,充分量の骨架橋が形成された。また,犬歯萌出後の骨架橋は,吸収することなく安定した形状を保持し,術後5年で上顎骨の垂直的な成長も促進された。
本症例よりOCP/Colは自家骨の代替として顎裂部へ臨床応用可能であることが実証された。

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© 2022 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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