日本口蓋裂学会雑誌
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口唇裂および口蓋裂の遺伝学的研究、とくに多因子遺伝を中心として
佐藤 和則
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1988 年 13 巻 2 号 p. 157-181

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抄録
CL/CPに関連する症候群および多発奇形16名を除く591名のCL/CP患者を発端者として家系調査を行い,次のごとき結果を得た.
1.CL(P)発端者の1度血族罹患率は2.26%,2度血族罹患率は0.37%,3度血族罹患率は0.40%で,一般集団におけるCL(P)発生率の16.2倍,2.6倍および2.8倍であった.
2.CP発端者の1度血族罹患率は1.64%,2度血族罹患率は0.32%,3度血族罹患率は0.11%で,一般集団におけるCP発生率の41.7倍,9'4倍および2.9倍であった.
3.CL(P)およびCP発端者の各種血族罹患率は多因子遺伝における各種血族罹患期待率に近似し,同胞の観察相対頻度は多因子遺伝における相対頻度予測値にほぼ一致した.
4.男のCL(P)発端者の1度,2度および3度血族罹患率は女のCL(P)発端者のそれら血族罹患率より低い値を示した.一方,男のCP発端者の1度,2度および3度血族罹患率は女のCP発端者のそれら血族罹患率より高い値を示した.
5.BCL(P)発端者の1度,2度および3度血族罹患率はUCL(P)発端者のそれら血族罹患率より高い値を示した.しかしCLP発端者の1度および3度血族罹患率はCL発端者のそれら血族罹患率より低い値を示した.
6.他部奇形をもたないCL(P)発端者の1度および3度血族罹患率は他部奇形をもっCL(P)発端者のそれら血族罹患率より高い値を示した.他部奇形をもつCP発端者ではいずれの血族でも罹患者を認めなかった.
7.陽性家族歴をもっCL(P)およびCP発端者の同胞罹患率は陽性家族歴をもたないCL(P)およびCP発端者の同胞罹患率より高い値を示した.
8.CL(P)発端者両親の真のいとこ結婚率および真のいとこ以外の血族結婚率は一般集団におけるそれら血族結婚率より高い値を示した.またCP発端者両親の真のいとこ結婚率は一般集団のそれより高い値を示した.
9.CL(P)の全血族における遺伝率は65.6±2.6%,CPのそれは67.0±13.6%であった.
10.以上の結果は多因子しきいモデルの特性によく適合し,CL(P),CPともに多数の遺伝子と多数の環境因子に支配される多因子遺伝形質と解される.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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