日本口蓋裂学会雑誌
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正常ならびにビタミンA誘発口蓋裂ラット胎仔の二次口蓋形成過程における血管構築の推移
血管鋳型走査電顕法による観察
千葉 順一
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1988 年 13 巻 2 号 p. 182-203

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抄録
二次口蓋の形成・発育過程における血管構築の三次元的な変化を解明することを目的として,正常およびVit.A過剰投与により口蓋裂を誘発させたラット胎仔にMercox樹脂を注入した血管鋳型標本を作成し,走査電子顕微鏡で観察し,以下の如き結果を得た.
1.口蓋突起が水平転位する以前の胎生15.5日の正常群,および胎生16.5日の口蓋裂群では,口蓋突起の血管分布密度は,ともに口腔側が鼻腔側より高いことから,突起内で活性の違いがあることが推察され,口蓋突起の水平転位に血管系が深く関与している可能性が示唆された.
2.正常群では,口蓋突起の正中側への伸び出しに伴って,血管網の網目が左右に引き伸ばされていたが,これは口蓋突起の急激な伸び出しに対して血管新生が対応できなかったために起きた代償的変化であると考えられた.一方,このような現象は口蓋突起が水平転位後ほとんど伸び出しを示さない口蓋裂群では全く認められなかった.
3.正常群では,口蓋突起の伸長時期から癒合時期にかけて,血管網の正中側自由縁の中央部に樹脂の球状塊が密集している領域が認められた.このことは,左右の口蓋突起血管網が吻合を形成する前段階として,血管壁に何らかの変化がおこっていることを示唆していると思われた.
4.正常群,口蓋裂群ともに,骨の形成領域には密な血管分布が認められ,同領域における活発な骨形成に対応していた.
5.口蓋裂群における口蓋突起の水平転位および上顎骨の形成は,正常群に比べてそれぞれ約1-1.5日遅れて観察された.
6.口蓋裂群における口蓋突起の血管網は正常群に比べて血管系の発達過程や,血管構築の基本的な形態に関しては差を認めなかった.しかし,血管網の発達は遅延し,毛細血管の太さや網目の大きさ,分布密度の不均一といった微細血管構築の相違が認められた.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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