日本口蓋裂学会雑誌
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開鼻声の定量的評価法に関する研究
周波数特性と主観評価量との関連について
片岡 竜太
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1988 年 13 巻 2 号 p. 204-216

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抄録

臨床応用可能な開鼻声の定量的評価法を確立するために,口蓋裂あるいは先天性鼻咽腔閉鎖不全症による開鼻声患者18例と健常人17例の発声した母音/i/について声道伝達特性を観察するためにケプストラム分析を行い,得られたスペクトルエンベロープに1/3オクターブ分析を加え,開鼻声の周波数特性を求めた.次に20人の聴取者による開鼻声の聴覚心理実験を行い,得られた主観評価量と声道伝達特性を表わす物理量の関連を検討したところ次の結果が得られた.
1)開鼻声のスペクトルエンベロープの特徴は健常音声のスペクトルエンベロープと比較して第1,第2フォルマント間のレベルの上昇と,第2,第3フォルマントを含む帯域のレベルの低下であった.
2)開鼻声の聴覚心理実験を行い得られた5段階評価値を因子分析したところ,開鼻声を表現する2次元心理空間上に2つの因子が存在し,第1因子は全聴取者に共通した聴覚心理上の因子であり,第2因子は聴取者間の個人差を表わす因子であると考えられた.そのうち第1因子を主観評価量とした.
3)開鼻声の主観評価量と1/3オクターブ分析から得られた物理量の相関を検討したところ,第1フォルマントの含まれる帯域から2/3-4/3オクターブ帯域の平均レベル(物理評価量L1)および第1フォルマントの含まれる帯域から9/3-11/3オクターブの帯域の平均レベル(物理評価量L2)と主観評価量に高い相関が認められた.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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