日本口蓋裂学会雑誌
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思春期前期の唇顎口蓋裂者の咀囑能率および食物の粉砕能について
山本 一郎
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1988 年 13 巻 2 号 p. 271-280

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抄録
本報告の目的は唇顎口蓋裂者の咀囑能率および食物の粉砕能が健常児と比較して異なるか否かを検討することにある.
ピーナツを資料とするManlyらの方法を0部改変し,歯科矯正治療をうけていない思春期前期の口蓋裂単独者5名,片側性唇顎口蓋裂者12名,両側性唇顎口蓋裂者8名の計25名を実験群被検者,これと対応する歯牙年齢の健常児12名を対照群被検者として,それらの咀囑能率を測定し,さらにピーナツ粉砕能のメッシュ別の分析をおこなった.得られた結果は次の通りであった.
1)対照群の咀囑能率は平均100.9%であった.
2)実験群被検者の咀囑能率は,それぞれ口蓋裂単独者53.4%,片側性唇顎口蓋裂者28.4%,両側性唇顎口蓋裂者15.1%であり,対照群の咀囑能率よりも有意の差をもって低かった(口蓋裂単独者P<0.05,片側性唇顎口蓋裂者・両側性唇顎口蓋裂者P<0.001).
3)片側性唇顎口蓋裂者,両側性唇顎口蓋裂者における4メッシュ,6メッシュ,8メッシュ上の残留率は対照群におけるそれらよりも,有意の差をもって高かった.しかし,口蓋裂単独者においては有意の差は認められなかった.
4)実験群被検者の中で臼歯部に交叉咬合を示したものについて,交叉咬合側と非交叉咬合側の咀囑能率に有意の差は認められなかった.
5)片側性唇顎口蓋裂者において,健側と患側の咀囑能率の間にも有意の差は認められなかった.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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