日本口蓋裂学会雑誌
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先天性鼻咽腔閉鎖不全症の治療成績について
今井 智子吉田 広山下 夕香里鈴木 規子松井 義郎道 健一
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1988 年 13 巻 2 号 p. 281-295

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抄録
昭和52年7月から昭和61年12月までの間に治療を行い1年以上経過観察することができた先天性鼻咽腔閉鎖不全症(CVPI)31例と,対照群として同時期に口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖不全に対して治療を行った同年代の患者30例について,治療法および治療成績を比較検討したところ,以下のような結果が得られた.
1.CVPI群は口蓋裂群よりも治療成績が低く,治療後に鼻咽腔閉鎖不全を示した症例が10%あり,また,鼻咽腔閉鎖機能が良好となっても開鼻声が消失しない症例が26%に認められた.
2.cvpl;群では顔面鼻咽腔症候群(症候群)において治療成績が低く,鼻咽腔閉鎖機能の改善に長期間を要した.
3.補綴的治療は口蓋裂と同様,CVPIに対しても有効であった.また,外科的治療を行わずに,発音補助装置を撤去できた症例はCVPI群で6例(19%),口蓋裂群では3例(10%)認められた.
4.外科的治療の成績はCVPI群,口蓋裂群とも発音=補助装置装着によって鼻咽腔閉鎖良好となった症例では良好であった.
5.低年齢症例の一部,および軽度不全症例では機i能訓練を含めた言語治療のみで良好な結果を示した症例がCVPI群で5例あった.
6.補綴的治療後に鼻咽腔閉鎖機能が改善するまでの期間は,症候群および軟口蓋造影X線規格写真所見による分類でII型の症例においては長期間にわたることが明らかとなった.非症候群あるいは1型の症例では口蓋裂群と比較して改善率はやや低いものの同様の改善過程を示した.
これらの結果から,CVPIに対してはまず補綴的治療,言語治療務るいは両者を併用した治療を試み,その結果から外科的治療の適応の有無を決定すべきであると考えられる.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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