日本口蓋裂学会雑誌
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咽頭弁移植術術後に発現した睡眠時無呼吸症候群の一症例と軟口蓋挙上装置の効果について
舘村 卓和田 健浜口 裕弘古郷 幹彦松矢 篤三高田 健治西尾 順太郎
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1990 年 15 巻 1 号 p. 29-44

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抄録
4歳1カ月時における咽頭弁移植術施行後に睡眠時無呼吸症候群を呈した一症例に対して,口腔内視診,睡眠時ポリグラフ検査,側方頭部X線規格写真分析,レントゲンビデオ検査,聴覚的音声検査を施行した・その結果,本患児の顎口腔および咽頭部における諸器官の構成は睡眠時無呼吸症候群を惹起し得る要素を術前より有していた可能性があったこと,咽頭弁移植術施行後,睡眠時に十分な経鼻腔吸気量が確保できず,呼吸運動に伴う軟口蓋の挙上運動が障害され,口蓋垂および軟口蓋と舌背が接触することによって経口腔吸気抵抗が上昇し,睡眠時無呼吸症候群が顕症化したことが明らかとなった.
本患児に対して種々の症状改善のための処置がなされたが,とりわけ軟口蓋挙上装置を装着したことによって著明に症状が改善した.本患児の治療から,咽頭弁移植術施行にあたっては,患者の年齢,顎形態,咬合状態ならびに顎口腔ならびに咽頭部における諸器官の相互の構成と経年的変化について,術前の検討が充分になされる必要があることが示唆された.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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