日本口蓋裂学会雑誌
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片側性唇顎口蓋裂者における対咬接触歯数と顎態の関連
矯正治療に伴う顎態の変化
薮野 洋米田 尚登山田 建二郎井藤 一江岩見 優子山内 和夫
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1990 年 15 巻 1 号 p. 9-20

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抄録
唇顎口蓋裂者の顎顔面頭蓋の形態的特徴といわれている下顎角の開大や下顎下縁平面の急傾斜は,一説に舌房容積が小さいことに起因するとされてきた.一方,これらの特徴は非口蓋裂者の対咬接触状態の不良な者においても認められた.そして,唇顎口蓋裂者における対咬接触状態と顎態との関係を検討したところ,矯正治療前の顎態については,下顎角の開大や下顎下縁平面の傾斜度が舌房容積よりむしろ対咬接触状態と関連が深いという示唆が得られた.
そこで本研究は,唇顎口蓋裂者の矯正治療に伴う対咬接触衝数や舌房容積の変化と顎態の変化との関係を調査することにより,顎態と対咬接触状態との関係について知見を得ようとしたものである. 片側性唇顎口蓋裂者26名の矯正治療前と治療後の経年的側方頭部X線規格写真と口腔膜型を分析したところ:
1.治療前・治療後とも,対咬接触歯数の少ない者の方が下顎角が開大し,下顎下縁平面が時計方向に回転していた.
2.治療前・治療後とも,上顎舌房容積の大小と∠Go,∠SN-MP,∠GZNの問に関連は認められなかった.
3・矯正治療に伴う対咬接触歯数の変化量と∠Goの変化量との間に負の相関が認められ,対咬接触歯数の増加が大きかった者の∠Goの減少量が大きかった.
以上の結果から,唇顎口蓋裂者における下顎角の開大や下顎下縁平面の急傾斜等の形態的特徴は,舌房容積が小さいことによるというより,むしろ対咬接触歯数が少ないことに起因していることが示唆された.そして,咬合状態の変化が咀噛筋機能動態を変え,下顎骨がそれに応じて再形成されるものと考えられた.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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