ラーゼン症候群は多発性関節脱臼と前額突出,低鼻梁,眼裂離開などの特異な顔貌を主たる症状とする稀な疾患である。30~50%に口蓋裂を伴うとされているが,歯科領域での報告は少なく,本邦でも過去において報告はみられない。今回,われわれは,ラーゼン症候群患者を歯科矯正科にて治療,管理していく機会を得たので報告する。
患者は8歳2か月の男児で,口蓋裂を伴い,上顎に3本の永久歯先天欠如が疑われた。さらに,側面セファログラム分析では,鼻骨,上顎骨を含む中顔面領域の前方への成長発育がきわめて悪いことが明らかとなった。