日本口蓋裂学会雑誌
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口唇口蓋裂患者および保護者に対する意織調査
日本とネパールの比較
力久 直昭一瀬 正治吉本 信也姫田 十二安蘓 智子
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1999 年 24 巻 1 号 p. 95-101

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抄録
ネパールは世界最貧国のひとつに数えられ,その医療福祉制度も日本に比べ遅れている.ネパールには現在4万人の口唇口蓋裂の患者がいると推定されるが,口唇口蓋裂の手術のできる医師はネパールにはほとんどいない.
われわれは1995年よりnon-government organization (NGO)の一機関の医療ボランティアに参加し,ネパールにて合計152例の口唇口蓋裂の手術を施行してきた.
今後医療ボランティアを続けていくにあたり,経済的・宗教的価値観の異なるネパールにおいて,口唇口蓋裂形成術がどの程度必要とされているのか確かめておくことは最も基本的なことと考えた.そこで1997年10月,手術を受けに来た口唇口蓋裂患者およびその保護者にアンケート調査を行った.特に口唇口蓋裂による身体的・社会的障害,治療方法の知識に焦点を絞って質問し,口唇口蓋裂の手術援助の必要性の有無について検討した.
アンケート調査結果より,手術援助の必要性は高いと考えられた.治療を受けることなく人との接触を余儀なくされるためか,成人患者の就職難,結婚難,小児患者のいじめなどが多くみられ,社会的障害が目立つ結果となった.また,治療についての知識は大変乏しくまた治療費が高価なため一般の人は手術を受けられない実情がわかった.そして手術を受けて良かったとの回答を全例から得た.以上の結果より,今後も医療ボランティアを続けていく必要性が明らかとなった.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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