日本口蓋裂学会雑誌
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Latham Applianceを用いた口唇口蓋裂患者の術前顎矯正治療
-装置装着前後における顎形態の比較-
村松 裕之市川 和博赤松 正西村 正樹谷野 隆三郎長田 光博
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2000 年 25 巻 3 号 p. 260-276

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抄録
1998年6月から1999年5月までに東海大学医学部付属病院形成外科に来院した片側完全唇顎口蓋裂4例,両側不完全唇顎口蓋裂1例,両側完全唇顎口蓋裂3例の計8症例に対し,pin retentionを応用した2種類のLatham ApPliance,すなわちDento-Maxillary Advancement Appliance(以下DMA装置)およびElastic Chain Premaxillary Repositioning Appliance(以下ECPR装置)を適用して初回口唇閉鎖手術前における顎矯正治療を施行,装置装着前後における顎形態の比較により以下の結果が得られた。
1.片側完全唇顎口蓋裂および両側不完全唇顎口蓋裂症例に対してはDMA装置を口腔内に装着し,一日0.5mmの顎移動を行った。これにより,1)開大した顎裂幅の縮小と,2)正中を越えて大きく偏位したgreater segmentとcollapseを来したlesser segmentを短期間に正常位に近く整復することができ,両segmentの歯槽堤はbutt-joint型あるいはそれに近い形態となり,歯槽弓の対称性が得られた。
2.両側完全唇顎口蓋裂症例に対してはECPR装置を口腔内に装着し,elastic chainにより両側各90gの力でpremaxillaを牽引した。これにより1)前方に突出したpremaxillaの後退と,2)両側の顎裂幅の縮小や,必要に応じてcollapseを来した左右maxillary segmentの側方拡大を行うことにより,premaxillaと両maxillary segmentの位置関係を正常位に近く整復することができた。また側面頭部X線規格写真を用いての計測によっても,A点の大きな後退が認められた。
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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