日本口蓋裂学会雑誌
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Furlow法による口蓋裂初回手術後の言語成績
-pushback法との比較-
木村 智江宇田川 晃一北川 裕子野田 弘二郎今富 摂子加藤 正子
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2000 年 25 巻 3 号 p. 277-285

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抄録
千葉県こども病院形成外科では1989年からdouble opposing Z-Plasty(Furlow法)を軟口蓋裂に行ない,1992年からは術式を工夫して全ての裂型に施行している。今回,Furlow法による初回口蓋形成術を行った口蓋裂症例39例(Furlow群)の言語成績を調査した。これを粘膜骨膜弁によるpushback法を施行した口蓋裂症例25例(pushback群)の言語成績と比較した。手術は同一の術者が行ない,鼻咽腔閉鎖機能と構音の評価は言語聴覚士が行なった。評価時年齢は両群とも大部分が4歳から5歳であった。その結果,1.良好な鼻咽腔閉鎖機能を獲得したのはFurlow群が82。1%,pushback群が76%でありχ2検定では手術法による有意差を認めなかった。唇顎口蓋裂と口蓋裂単独を分けて検定した場合も良好な鼻咽腔閉鎖機能獲得率に手術法による有意差を認めなかった。2.構音訓練を行なわずに正常な構音を獲得したのはFurlow群が66、7%,pushback群が48.0%であり,2検定では有意差を認めなかった。また,鼻咽腔閉鎖機能良好例のうち正常構音を獲得したのはFurlow群が75%,pushback群が47.4%でありχ2検定で有意差を認めた(χ2=3.986,df=1,p<.05)。3.鼻咽腔閉鎖機能良好例の構音障害は,Furlow群32例のうち口蓋化構音が12.5%,側音化構音が3.1%あった。pushback群19例には口蓋化構音が26.3%,側音化構音が31。6%あった。口蓋化構音と側音化構音の出現率はFurlow群の方に少ない傾向であった。以上から,Furlow法の言語成績はpushback法に劣らないことが示唆された。
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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