日本口蓋裂学会雑誌
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Hotz床併用二段階口蓋形成手術法施行患者の新鮮自家腸骨海綿骨細片移植後の評価
X線CTを用いて
森田 修一鳥養 葉子石井 一裕若松 孝典花田 晃治小野 和宏飯田 明彦今井 信行高木 律男小林 富貴子林 孝文
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2001 年 26 巻 1 号 p. 114-124

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抄録

CTを用いてHotz床併用二段階口蓋形成手術法(以下二段階法)を受けた患者での,移植術前における顎裂部の状態,ならびに術後における骨架橋状態について評価を行うことを目的とした.対象は新潟大学歯学部附属病院口腔外科にて二段階法を行った片側性唇顎口蓋裂患者のうち新鮮自家腸骨海綿骨細片移植手術を行い,CT画像データが保存されていた14名(女性5名,男性9名,平均骨移植術施行時年齢110歳3か月)である.資料として移植術前後(平均3.6か月後)に撮影したCT画像を使用し,術前の裂部と,術後の骨架橋について分類し検討した.また移植術施行時の年齢,術前後の裂側犬歯歯根の状態,萌出についても検討を行った.
その結果,術前の裂部形態は5つに分かれ,鼻腔側,歯槽頂部とも前方部が広い6例が最も多く,次いで鼻腔側で前方部が広く歯槽部では幅が同じ3例,その逆のものと,鼻腔側で前方が広く歯槽部で後方が広いものが各々2例で,鼻腔側,歯槽頂部とも同じ幅のものが最も少なく1例であった.術後の骨架橋の形成状態は14症例すべてで歯の移動が可能な骨架橋を認めたが2症例では鼻腔側の骨形成が乏しかった.14症例の手術時年齢は7歳から15歳で,犬歯は萌出が4例,未萌出が10例,犬歯歯根の形成状態は1/3からほぼ完成したものまでと様々であった.一方,鼻腔側の骨形成が乏しい2症例の術前の裂部はともに骨欠損が歯槽部から鼻腔側部にかけて前方で広く後方で狭い形態を呈し,鼻腔側の裂隙が20mm以上のものであった.以上より,移植術後,歯の移動可能な骨架橋を獲得できる可能性が高くなることが明らかになった.また,従来から言われてきた手術施行時の犬歯の状態,手術施行時年齢などが骨移植術の成否に与える影響はあまり大きくなく,裂隙の幅の与える影響が大きいように思われた.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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