日本口蓋裂学会雑誌
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口唇口蓋裂患者の病名告知に関する研究
佐戸 敦子石井 正俊石井 良昌森山 孝森田 圭一郡司 明美今泉 史子村瀬 嘉代子高橋 雄三榎本 昭二
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2001 年 26 巻 1 号 p. 97-113

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抄録

本研究は,口唇裂口蓋裂(以下CL/CP)患者に対する病名告知の現状を知り,告知をいつ,どのような形で行うことが患者及び家族にとって適切であるかについて検討することを目的とした.1997年1月から2000年2月までに東京医科歯科大学歯学部付属病院口腔外科外来を受診したCL/CP患者のうち,13歳から27歳までの患者及びその親を対象とし,質問紙(患者26項目及びY・G,CMI,親44項目)による調査を行った.患者・親共133部の質問紙を配付し,患者64名(回収率48.1%),親73名(回収率54.9%),親子共に回答が得られたものは58組であった.
結果は以下のとおりである.
(1)告知に関して親は患者より肯定的な認識をしていることが多く,親子間での認識のズレがあった.
(2)受診理由を知りたいと思ったことのある患者は全体の32.8%,受診i理由を知っている人は全体の78.0%であり,必ずしも受診理由を知りたいと思った人が知っている訳ではなかった.
(3)病名を知りたいと思ったことのある患者ほど告知を受けたことを肯定的にとらえる傾向があった(P<.10).
(4)Y・Gによる性格傾向は,CL/CP患者群では対照群と比べ,有意に情緒不安定なB類とE類が多く積極安定型のD類が少なかった(p<.01).
(5)CMIによる精神的健康度はCL/CP患者群は,健康度の高いI/II領域に属する者が対照群より有意に多かった(p<.01).
(6)告知時期の認識が親子間で不一致の群は,一致群より,家族関係に問題が生じやすいとされるFACESIIIのExtreme群の数が有意に多かった(p<.01).
これらより,病名告知は患者の望む時期に,親や治療者が治療の見通しを伝え,患者の疑問に応えられるような配慮をしつつ行うことが重要であることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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