日本口蓋裂学会雑誌
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Pushback法を行った唇顎口蓋裂患者の言語成績分析
Hotz床は言語成績向上に有効か?
赤田 典子
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2002 年 27 巻 1 号 p. 34-46

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抄録
1981年4月から1996年12月の間に鹿児島大学歯学部附属病院第二口腔外科でpushback法による口蓋形成術と術後言語治療を行った唇顎口蓋裂一次症例135名を対象として,4歳時の鼻咽腔閉鎖獲i得状況,破裂音単音発音の獲得状況および異常構音発現状況を調査した.さらにHotz床を使用した患者(装着群)70名(UCLP42名,BCLP28名)と使用しなかった患者(非装着群)65名(UCLP48名,BCLP17名)に分けて言語成績を比較分析し以下の結果を得た.
1.135名中124名(91.9%)が4歳時に鼻咽腔閉鎖を獲得していた.装着群は94,3%,非装着群は89.2%が閉鎖を獲得し,閉鎖獲得時の日齢は,装着群が平均847日,非装着群が平均866日,獲得までの術後日数は装着群が平均312日,非装着群が平均292日で,いずれも群問に有意差はなかった.
2.4歳時に破裂音単音の発音ができた者は,/p/では装着群の97.1%,非装着群の93.8%,/k/では装着群の92.9%,非装着群の93.8%,/t/では装着群の82.9%,非装着群の76.9%であった.両群ともに/P/,/k/,/t/の順に獲得する傾向を示した.UCLPの装着群は非装着群より/k/獲得時の日齢が有意に早かった.
3.4歳時に異常構音を認めた者は,装着群では34.3%,非装着群では44.6%で,両群とも口蓋化構音が最も多かった.群間に有意差はなかった.
4.手術時期の差による影響を除外するために,1歳5か月から1歳7か月の間に手術を行った61名(装着群31名,非装着群30名)を選択して同様の検討を行った結果でも両群問に差は認めず,言語成績に対するHotz床の効果は確認されなかった.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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