日本口蓋裂学会雑誌
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口唇裂口蓋裂児をもつ母親の産科入院中の状況
中新 美保子篠原 ひとみ津島 ひろ江江幡 芳枝森口 隆彦岡 博昭稲川 喜一山本 真弓佐藤 康守平井 眞代瀬尾 邦子植田 直人
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2002 年 27 巻 3 号 p. 269-278

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抄録
本研究は,口唇裂口蓋裂児と母親に対し,口唇裂口蓋裂治療を専門とする医療者が,よりよいケアの提供を行うことを目的に,産科入院中の母親の状況について調査を行った.調査対象は,本院口唇裂口蓋裂専門外来受診時の患児に同伴した母親145人であり,以下の結果を得た.
1.出産前に口唇裂口蓋裂についての知識を持っていない母親は44.8%,情報提供を受けた母親も6.8%とわずかであった.
2.出産直後,患児と対面できた母親は53.1%であった.
3.産科医からの具体的な病状説明を出産2日目以降に受けた母親は31.7%であった.また,治療専門医からの病状説明を受けた母親は8.3%と非常に少なかった.
4,直接授乳指導を受けていない母親は30.3%,退院時の療育指導や親の会などの情報提供を受けていない母親は7割前後と,入院中のケアや指導も不充分であった.
5.産科入院中に医療者から受けた対応に関して,母親の3割が不満足と考えていた.口唇裂口蓋裂治療を専門とする医療者は,産科領域でのケアに満足していない母親が多くいることを認識し,初診時には,(1) 病状に対する詳細な説明,(2) 授乳指導,(3) 長期療育に向けた養育指導,(4) 療育生活を支えるための情報提供(育成医療制度・「親の会」紹介・保健師の訪問指導)を行う必要がある.また,チーム医療の中に臨床心理士などの配置を行い,母親の心理的ケアを継続することが今後求められる.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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