日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
27 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 2002 年27 巻3 号 p. e1-
    発行日: 2002年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 中新 美保子, 篠原 ひとみ, 津島 ひろ江, 江幡 芳枝, 森口 隆彦, 岡 博昭, 稲川 喜一, 山本 真弓, 佐藤 康守, 平井 眞代 ...
    2002 年27 巻3 号 p. 269-278
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,口唇裂口蓋裂児と母親に対し,口唇裂口蓋裂治療を専門とする医療者が,よりよいケアの提供を行うことを目的に,産科入院中の母親の状況について調査を行った.調査対象は,本院口唇裂口蓋裂専門外来受診時の患児に同伴した母親145人であり,以下の結果を得た.
    1.出産前に口唇裂口蓋裂についての知識を持っていない母親は44.8%,情報提供を受けた母親も6.8%とわずかであった.
    2.出産直後,患児と対面できた母親は53.1%であった.
    3.産科医からの具体的な病状説明を出産2日目以降に受けた母親は31.7%であった.また,治療専門医からの病状説明を受けた母親は8.3%と非常に少なかった.
    4,直接授乳指導を受けていない母親は30.3%,退院時の療育指導や親の会などの情報提供を受けていない母親は7割前後と,入院中のケアや指導も不充分であった.
    5.産科入院中に医療者から受けた対応に関して,母親の3割が不満足と考えていた.口唇裂口蓋裂治療を専門とする医療者は,産科領域でのケアに満足していない母親が多くいることを認識し,初診時には,(1) 病状に対する詳細な説明,(2) 授乳指導,(3) 長期療育に向けた養育指導,(4) 療育生活を支えるための情報提供(育成医療制度・「親の会」紹介・保健師の訪問指導)を行う必要がある.また,チーム医療の中に臨床心理士などの配置を行い,母親の心理的ケアを継続することが今後求められる.
  • 新垣 敬一, 砂川 元, 平塚 博義, 新谷 晃代, 仲盛 健治, 天願 俊泉, 大山 哲生, 前川 隆子
    2002 年27 巻3 号 p. 279-285
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂の治療においては,適切な時期に手術を行うことによって,良好な鼻咽腔閉鎖機能と言語成績が得られることが各施設から報告されている.術後の鼻咽腔閉鎖機能獲i得に関連する因子としては,裂型,術前の破裂形態をはじめ多くの要因が考えられるが,その結果は後の言語治療の成績を左右する重要な因子である.今回著者らは,裂型,術前の破裂幅と咽頭腔の深さを調べることにより,その破裂形態と鼻咽腔閉鎖機能獲得期間と関連する因子を明らかにすることを目的として本研究を行った.
    結果:1.破裂幅と咽頭腔の深さに鼻咽腔閉鎖機能獲i得期間との関連が認められた.2.術前評価と鼻咽腔閉鎖機能獲得期間との関連がみられ,破裂幅と咽頭腔の深さのどちらかが10mm未満でありかつどちらも最大16mmを越えないものにおいて鼻咽腔閉鎖機能獲得期間が比較的短い傾向が認められた.
  • 野原 幹司, 舘村 卓, 藤田 義典, 和田 健
    2002 年27 巻3 号 p. 286-291
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋帆挙筋筋電図の検査結果に再現性があるかどうかの検討を行った.被験者は,鼻咽腔閉鎖機能に変化がないと考えられる健常成人を対象とし,blowing時と発音時の口蓋帆挙筋筋電図を電極を変えて2回採取した.得られた筋活動の実測値から,電極感度や刺入位置の影響を少なくするために,筋活動の最大値を100として発音時の筋活動値を換算した相対値である%peakEMGを求めた.その結果,筋電図採取1回目と2回目の発音時の%peakEMGの相関係数は,0.97を示し有意な相関を呈することが明らかとなった.このことから,口蓋帆挙筋筋電図の%peakEMGに再現性があることが示され,%peakEMGを用いることにより,鼻咽腔閉鎖機能の変化を経時的に評価することが可能であることが示唆された.
  • 硬軟口蓋裂
    中嶋 敏子, 吉川 厚重, 三川 信之, 柳田 憲一, 落合 聡, 中村 典史, 大石 正道
    2002 年27 巻3 号 p. 292-296
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    通常Hotz型口蓋床は口蓋形成術前の唇顎口蓋i裂症例に用いられるが,われわれの施設では,硬軟口蓋裂症例にも用いている.口蓋形成術前のHotz型口蓋床の装着が構音発達に及ぼす影響について知見を得るために装着群と非装着群に出現した異常構音について比較検討した.その結果,装着の有無による異常構音出現の差はみられなかった.むしろ,口蓋形成術後の鼻咽腔閉鎖不全や口蓋痩孔の残存が,異常構音の出現に関与することが示唆された.
  • 朝日藤 寿一, 寺田 員人, 小野 和宏, 八木 稔, 小林 正治, 飯田 明彦, 野村 章子, 佐藤 孝弘, 吉羽 永子, 田井 秀明, ...
    2002 年27 巻3 号 p. 297-305
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇裂口蓋裂患者の治療には各科の専門性を活かした質の高いチームアプローチが必要不可欠である.新潟大学歯学部附属病院では1991年に口蓋裂診療班が発足し,2000年12月31日現在778名の患者が登録されている.われわれは一次症例433名を対象に,チームアプローチのもと,どの程度系統的な診療を受けているかを評価する目的で,患者動向を調査しすでに報告した.今回,10歳以上18歳以下の360名を対象として二次症例患者を含め,現行のチームアプローチのもと,どの程度系統的な診療を受けているかを評価する目的で調査,検討をおこなった.
    調査項目は患者の生年月日,裂型,性別,初回形成手術実施医療機関,住所など既存のデータに加え,受診状況のうち各診療室初診時年齢,管理状況を調査し,次の結果を得た.
    1,一次症例の割合は64.2%で,ほぼ2/3を占めていた.17歳未満で一次症例の割合が多く,17歳以上で二次症例の割合が多かった.また,住所別患者数に関しては新潟県内の患者が一次症例・二次症例併せて319名,88.6%を占めていた.
    2.歯の診療室(従来の保存修復,歯内療法科),歯周病診療室,冠・ブリッジ,入れ歯診療室の受診率が低かった.
    3.二次症例の初診時平均年齢は,口腔外科6歳6か月,言語治療室4歳1か月,予防歯科診療室3歳5か月,小児歯科診療室4歳2か月,矯正歯科診療室5歳6か月であった.
    4.患者管理状況は良好で,一次症例,二次症例ともに治療計画に基づいたチームアプローチのもと,包括的治療が円滑に行われていることが示唆された.
  • 新井 透, 石井 一裕, 森田 修一, 花田 晃治, 小野 一宏, 高木 律男
    2002 年27 巻3 号 p. 306-324
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Hotz床併用二段階口蓋形成手術法の顎顔面発育に対する長期成績を評価することを目的とし,本法で治療した片側性唇顎口蓋裂の29名(男児19名,女児10名)(二段階法群)と比較のために一段階法を施行した片側性唇顎口蓋裂の28名(男児18名,女児10名)(一段階法群)を対象とし,二段階法群から得られた87枚の側面セファログラム(男児54枚,女児33枚)と一段階法群から得られた89枚の側面セファログラム(男児58枚,女児31枚)を,撮影時年齢に応じて,男女それぞれ6,8,10,12,14歳群に分類した.各被験者の側面セファログラムをトレースし,SellaとSella-Nasionlineで重ね合わせした後,24項目について計測を行った.両群とも各年齢で男女別々に平均値と標準偏差を求めるとともに,各年齢時の両群問の比較検討と各群の増齢的変化について検討した.また,両群とも各年齢時の平均的プロフイログラムを作製し,その成長様相についても検討した.その結果,∠SNAは男女とも二段階法群が一段階法群と比較して常に大きな値を示した.それゆえ∠ANBも二段階法群が,常に大きな値を示し良好な上下顎関係を保っていた.これに対して,一段階法群の男児では増齢とともに顎関係が悪化していく傾向が認められ,女児では常にマイナスの値を示した.以上より,Hotz床併用二段階口蓋形成手術法において上顎の成長が良好であり,その結果バランスのとれた顎顔面の成長が生じていることが明らかとなった.
  • 久徳 茂雄, 安井 浩司
    2002 年27 巻3 号 p. 325-332
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    片側唇裂において人中稜は初回唇裂手術で口輪筋の生理的縫合とともに確実に行われるべきと考える.われわれが1992年より行ってきた片側唇裂手術におけるdenuded C-flapによる人中稜形成術の中で長期成績について検討した.本法により再建された人中稜は長期間にわたってその形態が良好に保持され,有用な術式と考えられた.
  • 早期手術例と非早期手術例の比較
    窪田 泰孝, 松浦 理城, 鈴木 陽, 谷口 智子, 竹之下 康治, 岡 正司, 中川 統充, 山城 崇裕, 白砂 兼光
    2002 年27 巻3 号 p. 333-338
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    生後60日以内の比較的早期に行う口唇形成術が片側性口唇裂(UCL)患児および片側性唇顎口蓋裂(UCLP)患児の顎顔面発育に及ぼす影響について検討を行った.方法は対象を生後60日以内に口唇形成術を行ったA群(UCL;37.4±14.2日,UCLP;32.5±11.9日)と生後61日以降に行ったB群(UCL;113.9±28.9日,UCLP;103.6±31.0日)に分類し,各群における顎顔面発育を7歳時に撮影した側面頭部X線規格写真を用いて評価した.その結果,S-N間距離N-Palatalplane/S-N,N-Ans/S-N,Ans-Pns/S-N,∠S・N・Ans,∠SNA,S-Pns/S-N,Cd-Gn/S-N,Cd-Go/S-N,∠SNBおよびGonial angleは各裂型ともA,B二群間で有意差は認められなかった.よって,生後60日以内の比較的早期に口唇形成術を行っても7歳時での顎顔面発育には生後61日以降に口唇形成術を行った場合とほぼ同等な影響しか及ぼさないと示唆された.
  • 二段階口蓋形成手術法の影響
    小野 和宏, 越知 佳奈子, 森田 修一, 飯田 明彦, 早津 誠, 藤田 一, 高木 律男, 石井 一裕, 朝日藤 寿一, 花田 晃治
    2002 年27 巻3 号 p. 339-349
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    一卵性双生児と診断された唇顎口蓋裂を有する兄と唇顎裂を有する弟の顎顔面形態を縦断的に観察し,二段階口蓋形成手術法が顎発育に与える影響について検討した.
    その結果,
    1.硬口蓋閉鎖術前に兄は弟に比べ上顎の前方への成長抑制が観察された.また上顎後方部の下方への成長も抑制されていた.
    2.硬口蓋長は硬口蓋閉鎖術まで兄弟間でほとんど差を認めなかった.硬口蓋閉鎖術後には兄は弟に比較して発育抑制がみられた.
    3.兄では下顎の時計方向の回転を認めた.
    4.兄弟ともに上下顎問の前後的位置関係には著しい不調和を認めなかった.二段階口蓋形成手術法では上顎歯槽部が比較的障害されずに大きくなるため,歯列不正は軽度であり,頭蓋底に対する上顎の位置が後方であっても,下顎の適応と相まって,著しい不調和のない上下顎関係が得られるものと考えられた.
  • REDシステムを応用して
    宮崎 顕道, 山口 哲也, 岡藤 範正, 杠 俊介, 近藤 昭二, 松尾 清, 栗原 三郎
    2002 年27 巻3 号 p. 350-365
    発行日: 2002/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    第一期治療の上顎前方牽引装置が奏効しなかった著しい上顎骨劣成長を伴う両側性口唇口蓋裂患者に対し,陥凹した中顔面の審美的改善を得るために創外型上顎骨延長装置Rigid external distraction system(以後,REDシステム)を応用した上顎骨延長術を経験し,若干の知見を得たので報告する.
    症例は治療開始時年齢9歳11ヵ月の女子で,両側性口唇口蓋裂に起因する咬合異常のため当科を受診した.第一期治療は,上顎骨成長促進のため上顎前方牽引装置を約2年8ヵ月用いたが奏効せず,依然著しい上顎骨発育障害を呈していた.そこで,治療方針をREDシステムによる上顎骨延長術に変更し,下顎後退術およびオトガイ形成術を併用することとした.
    上顎骨の移動様相は,側貌セファロ分析および上顎骨に埋入したメタルインプラントピン(以後,骨内マーカー)を用いて評価した.延長に際し,REDシステムの延長スクリューは34mm延長したにもかかわらず,骨内マーカーの前方移動は約7.5mmを示し,スクリュー部の延長量に比べ,上顎骨の移動量は少なかった.スクリュー延長量に比べ移動量が少なかった原因として,索引フックの変形,牽引装置の位置変化の他,口唇口蓋裂術後療痕組織などの緊張により,延長方向や上顎骨の前方移動が抑制されたこと,切歯骨のひずみなどが重複したためと思われた.しかしながら,延長量は初期目標の8mmにほぼ到達しており,また,延長後の上顎骨の後戻りはほとんど認められず,安定していた.
feedback
Top