日本口蓋裂学会雑誌
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母音発音時の鼻咽腔閉鎖運動に関する筋電図学的研究
元村 太一郎三村 保後藤 友信井上 一男宮崎 正
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1979 年 4 巻 1 号 p. 48-58

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抄録
口蓋裂患者の治療にあたって,鼻咽腔閉鎖機能をいかに獲得させるかは,最も重要な課題である.特に,Blowing時や破裂子音時に比べ,母音発音時における完全な鼻咽腔閉鎖運動を獲得させることは,困難な場合が多い.しかしながら,母音発音時における鼻咽腔閉鎖機構の詳細は,正常人においてさえ,未だ明らかにされておらず,その意見の一致をみていない.今回,著者らは,正常人を対象に,口蓋帆挙筋と上咽頭収縮筋の両者より,同時に筋電図を採取することによって,母音発音時における筋活動状態を把握した.さらに,口蓋裂未手術患者を対象に測定し,正常人との違いを明らかにするとともに,咽頭弁移植術後患者とも比較検討した.その結果,
1.正常入においては,口蓋帆挙筋,上咽頭収縮筋ともに,母音発音時より破裂子音発音時に高い筋活動が示された.しかし,母音の違いによる筋活動量の変化に一定の傾向は認められなかった.口蓋帆挙筋筋活動量と,上咽頭収縮筋の筋活動量は相反している様相が示された,
2.口蓋裂未手術群においては,口蓋帆挙筋と上咽頭収縮筋とが,同調した筋活動を示すとともに,母音各音間での筋活動量に著明な差を認めた.
3.咽頭弁手術後群では,正常人に類似した様相を示すものと,口蓋裂未手術群に似た様相を示すものとがあった.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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