日本口蓋裂学会雑誌
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唇・顎・口蓋裂の1症例における外科治療の経過と心理的性格検査所見の分析
糟谷 政代玉城 廣保藤内 祝金田 敏郎岡 達
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1980 年 5 巻 1 号 p. 40-46

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抄録
口唇・口蓋裂症例に対する治療は,早期に口腔形態や機能の改善をはかり,正常な構音の獲得をうながすと共に,おこりうる障害を未然に防ぎ,正常な発育をうながすため,単に外科療法にとどまらず,広く心理学・小児科学・言語学・歯科矯正学などを含めた総合治療の計画と実行が必要かつ重要である.しかし,これらの積極的な治療がうけられず,口蓋裂言語・変治唇裂を後遺し,情緒・心理面に問題が出現した16才左口唇顎口蓋裂患者の1女子症例に対し,われわれは手術前後における言語状態や心理面を,発語明瞭度検査・MMPI・MAS・田・研式親子関係診断テストなどで経時的に観察し検討したので報告する.
その結果は次のように要約される.
1.手術前後におけるMMPI検査では,過度の感受性と邪推・さい疑的傾向の指標Paや,不安・恐怖と強迫観念の指標Pt,および,思考や行動の活発さ,一般的活動の水準の高さを知る指標Maなどが,高得点となった.
2.これらの異常の発端を手術のみに関連ずけることは危険であり,背後に生じている因子(たとえば,親子関係,将来の指針,社会環境など)を正しく把握し,改善しなければ,真の解決とならないことを示唆していた.
3.初診時および各治療ステップ毎の医療ならびに心理学的指導が,いかに大切で重要であるかを,我々診療者側に示唆した症例であった.
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© 一般社団法人 日本口蓋裂学会
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