日本口蓋裂学会雑誌
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東京医科歯科大学第1口腔外科における過去3年間の唇顎口蓋裂患者の臨床統計的研究
裂型別にみた変遷と合併奇形について
石井 純一橋本 賢二吉増 秀實福田 廣志冨塚 謙一塩田 重利
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1982 年 7 巻 1 号 p. 77-84

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抄録

われわれは, 最近の唇顎口蓋裂患者の動向をつかむ目的で, 東京医科歯科大学歯学部第1口腔外科における唇顎口蓋裂患者の過去3年間の臨床統計的観察を行った.調査対象は昭和52年10月1日より同55年9月30日までに当科にて初回手術を行った246例である.調査項目は, 裂型別頻度, 性差, 左右差, 家族出現率, 合併奇形等である.
さらに本学における過去2回の報告(昭和33年小林, 昭和39年大橋)との比較を行った.今回の調査結果では先の報告に比し裂型別では口蓋裂(37.0%)の増加と唇顎口蓋裂(37.4%)の減少がみられ, また唇裂, 唇顎裂においては男女の比率が逆転していた.それらの原因として当科来院数の変化, 環境要因等の変化などが考えられた.
合併奇形に関しては, 246例中今回面接調査で確認できた53症例を対象とした.裂型別にみると口蓋裂に最も多く, 唇裂, 唇顎裂と唇顎口蓋裂はほぼ同比率であった.舌小帯強直症, 肋骨異常, 精神発達遅滞などが比較的多かったが, その他全身的に合併奇形がみられた.また家族性出現群と非家族性出現群とに分けた場合, 前者が他の奇形と合併する確率が有意に高かった.
舌小帯強直症は口蓋裂を伴う例に多くみられ, 肋骨異常は11例4.5%にみられ, 性差では女性に多かった.第12肋骨欠損が10例にみられ, 1例に第13肋骨の存在が認められた.精神発達遅滞については口蓋裂を伴う症例に多くみられ(6例中5例), 言語発達との関連が示唆された.

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