2008 年 48 巻 6 号 p. 430-432
症例は47歳女性である.健診にてうっ血乳頭を指摘され,眼科よりの紹介で当科を受診した.神経学的診察では,両側うっ血乳頭をみとめるのみであり,頭痛をふくめ自覚的臨床症状もみとめなかった.髄液検査にて髄液圧440mmH2Oと著明な上昇をみとめるも,髄液組成,血液検査,画像検査にて頭蓋内圧亢進を呈する明らかな他疾患をみとめず,特発性頭蓋内圧亢進症と診断した.Acetazolamideによる加療をおこない,髄液圧の改善傾向をみとめ,現時点までに視力低下や視野異常をみとめていない.特発性頭蓋内圧亢進症には頭痛をともなわない症例があることと,本症による失明の危険性から考慮し,神経学的診察における眼底検査の重要性を改めて強調したい.