臨床神経学
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総説
ALS研究の最近の進歩:ALSとTDP-43
葛原 茂樹
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2008 年 48 巻 9 号 p. 625-633

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抄録

筋萎縮性側索硬化症(ALS)では上位と下位の運動ニューロンの選択的傷害が強調されてきた.しかし,近年はALSと,認知症を合併するALS(ALS-D)や前頭側頭葉変性症(FTLD)との病変の連続性が明らかになり,共通の蓄積物としてユビキチン陽性封入体がみいだされた.ユビキチンが結合している蛋白はTAR DNA-binding protein-43(TDP-43)であることが,2006年秋に米日の研究者によってほぼ同時に報告され,ALS研究に大きなインパクトを与えた.ALS, ALS-D, FTLDは蛋白化学的にはリン酸化されたTDP-43が細胞質内,神経突起内,神経核内に蓄積するTDP-43 proteinopathyと見なされる.2008年には家族性ALSの原因遺伝子として,TDP-43遺伝子変異が同定され,ALSとの関連がより強固になった.今後,TDP-43の機能や代謝を明らかにすることにより,ALSの発症機構と分子病態,治療薬研究が飛躍的に発展することが期待される.

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© 2008 日本神経学会
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