症例は69歳女性である.約20年前に乳房のしこりに気付いたが放置していた.意識障害のため救急外来を受診し,血液検査で血液凝固亢進状態と,頭部CTで両側視床の低吸収域と深部脳静脈の部位に高吸収域が示された.脳血管造影をおこない,深部脳静脈血栓症と診断した.ヘパリン持続点滴による抗凝固療法をおこない,意識状態は徐々に改善した.乳房のしこりは生検により粘液癌と診断された.悪性腫瘍から血液凝固亢進状態となり,深部脳静脈血栓症を発症したものと考えられた.悪性腫瘍に深部脳静脈血栓症を合併することはきわめてまれであるが,特徴的な頭部CTの所見から早期の診断,治療に結びつけることができた.