2013 年 53 巻 10 号 p. 835-838
症例は33歳男性である.緩徐に進行する複視,傾眠などで発症した.頭部MRIで,松果体近傍にガドリニウムで著明に造影される腫瘤性病変をみとめ,生検をおこなったところ,類上皮性肉芽腫の出現をともなう著明な炎症所見をみとめた.炎症性肉芽腫疾患をうたがいステロイドを投与したが,無効であったため,生検標本を免疫組織化学的に再検討したところ,c-kit,PLAP(placental alkaline phosphatase)に陽性の腫瘍細胞が少数確認され,胚細胞腫であったことが判明した.胚細胞腫はまれに炎症性肉芽腫病変を形成することがあり,生検標本における病理診断に注意が必要と考えられた.