臨床神経学
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1 神経疾患患者救済のための神経学会災害対策ネットワーク作り
日本神経学会災害救援ネットワークの構築に向けて
阿部 康二内山 真一郎松原 悦朗村松 慎一熱田 直樹北川 一夫井口 保之大星 博明梶 龍兒寺尾 安生
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2013 年 53 巻 11 号 p. 1155-1158

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抄録

2011年3月11日金曜日の東日本大震災・大津波に際しては,一般住民に加えて多くの神経疾患患者が地震と津波の犠牲になった.このたびの大災害では地域行政も同時に被災したケースが多かったため,被災地での救援活動が十分に実現できなかったことも指摘されている.そこで日本神経学会では「神経疾患患者は災害弱者であり特別な救援が必要である」という考え方のもとに,発災当年の2011年5月の名古屋市での学術大会ならびに翌2012年5月の東京での学術大会で災害特別シンポジウムを開催し,自然災害の多い日本での災害医療に対する日本神経学会の取り組み方について議論を進めて来た.この議論の中で当学会が主たる診療対象としている神経疾患患者の災害時救援ネットワーク設立が急務であるという結論となり,2012年5月以来その実現に向けて各方面と協議を重ねて来た.その結果,「神経疾患患者の災害時救援は,患者救済という点で平時における患者治療と同等の意義がある」という理念の下に,次のような今後の取り組みが決定された.(1)日本神経学会として独自の災害ネットワークを設立して,災害時の神経疾患患者救援に積極的に取り組む.(2)国や地域行政・関連団体と緊密に協力しながら効果的な災害ネットワークの確立と運用を図る.(3)本ネットワークが救援すべき対象疾患は神経内科疾患全般にわたることが基本であるが,発災時に自力避難困難な在宅療養中の神経難病患者などを当面の対象とする.(4)平時には,災害対策ネットワーク体制を学会ホームページなどで常時整備更新し,同時に災害時における救援希望患者のリスト整備に努める.(5)発災時には,救援希望患者リストの公表(パスワードなど制限付き)および患者受入れ可能施設の公表をはじめ,安否確認や患者移送,救援物資配送,救援隊派遣などについて迅速に対応する.現在この方針に基づき,患者サイドからの被災時救援希望と,受入れ施設サイドからの発災時受入れ可能性調査を進めている所である.本シンポジウムではこれまでの経過報告をさせていただき,参加者の皆様からご意見をいただきたいと考えている.

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© 2013 日本神経学会
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