臨床神経学
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53 巻 , 11 号
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第54回日本神経学会学術大会(2013年)
大会長講演
  • 水澤 英洋
    2013 年 53 巻 11 号 p. 893-897
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    Neurological diseases have long been thought to be difficult or intractable to be cured. Recent progress in researches on etiologies and pathogeneses of many neurological diseases, however, has made it become possible to treat some diseases such as bulbo-spinal muscular atrophy and Alzheimer’s disease not only symptomatically but also in the sense of disease modification. We may be at the entrance of a new era where many neurological diseases would become treatable and overcome. My individual experiences studying 3 diseases, namely, distal myopathy with rimmed vacuoles, amyotrophic lateral sclerosis and spinocerebellar ataxia were presented and through them the following massages were conveyed to young neurologists of the Japanese Society of Neurology (JSN); To tackle the case even there is no similar case in the literature because you are the only one who could help the patient and some clues must be found, To cooperate with other colleagues and patients because you are not alone, To be reasonable, logical or scientific, To always be innovative or seek better situations, and To be global or international sharing real time information with other peoples in the world. JSN will make great leaps to the goals under the mission to contribute happiness of peoples in Japan and other countries through neurology including neurological practice, education and research.
教育講演2
  • 松井 真
    2013 年 53 巻 11 号 p. 898-901
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    多発性硬化症は,中枢神経組織に慢性の炎症性脱髄病変をきたす疾患であるが,発症にいたる過程は3段階に分けられる.第一段階は,MS初期の標的抗原と考えられる中枢神経ミエリンの構成成分に対して,自己免疫応答が成立する過程である.第二段階は中枢神経組織への侵入である.活性化T細胞は容易に血液脳関門を越えることができ,中枢神経内に入った後にミクログリアなどから感染因子と類似部分のあるミエリン抗原の提示を受ける.その結果,第三段階として,炎症惹起性サイトカインの放出,末梢血から中枢神経組織へのマクロファージ動員を経て,最終的に脱髄がおきる.本稿では各ステップに関与する重要な免疫学的因子を概説する.
  • 佐古田 三郎
    2013 年 53 巻 11 号 p. 902-
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
  • 中川 正法
    2013 年 53 巻 11 号 p. 903-906
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    DNA解析技術の画期的進歩(次世代シーケンス技術など)の結果,全ゲノム関連解析(GWAS),全エクソーム解析が可能となり,単一遺伝子病や“ありふれた疾患”の関連遺伝子解析研究が急速に進展し,パーソナルゲノムの時代へと進んでいる.現在,約2,900疾患の遺伝子検査が可能となっている.今後も飛躍的な疾患原因遺伝子・関連遺伝子の発見,ES細胞,iPS細胞の開発研究の急速な展開により,遺伝子治療,再生医療もより現実的になりつつある.このようなゲノム研究のいちじるしい進展により,医療のパラダイムシフトが展開されようとしているが,一方で従来の生命倫理観だけは解決困難な課題も多く,生命倫理に関する国民的論議が必要とされている.
  • 野元 正弘, 永井 将弘, 西川 典子, 辻井 智明, 岩城 寛尚
    2013 年 53 巻 11 号 p. 907-910
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    用量の国際比較,治療薬の個体差,添付文書の評価と使い方,およびグローバル化と医学・医療を取り上げた.日本での承認用量は海外よりも少ないものが多い.用量幅が広いと個体差に対応して用量の調節が可能となり,治療効果は高くなる.一方,効果と副作用を見極める細かな観察が求められる.個体差には個体間差と個体内差がある.いずれにも薬物動態が影響しており相互作用など情報を収集して治療をおこなう.添付文書は法的根拠を持つ薬の唯一の取扱説明書とされる.アジア諸国の発展とともに日本の役割も変化しつつある.脳神経系の薬はもっとも発展しており,日本の研究が世界の医療に貢献しつつあり神経内科医の役割は大きい.
教育講演3
  • 梅村 淳, 大山 彦光, 下 泰司, 服部 信孝
    2013 年 53 巻 11 号 p. 911-914
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    近年種々の運動障害疾患に対して脳深部刺激療法(DBS)が行われている.パーキンソン病(PD)には視床下核(STN)または淡蒼球内節(GPi)のDBSが行われ,その有効性や長期成績が示されている.DBSはPDの全般的な運動症状を改善し,STN刺激ではドパミン作動性薬剤が大幅に減量できる.DBSと薬物治療との併用でより長期的な症状の進行に対処可能となる.難治性振戦には視床Vim核のDBSが行われるが,最近posterior subthalamic area(PSA)も注目されている.また全身性ジストニアにはGPi DBSが有効である.薬物で症状改善が困難な運動障害疾患に対してDBSを検討すべきである.
  • 冨本 秀和
    2013 年 53 巻 11 号 p. 915-918
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    アルツハイマー病(AD)と脳血管障害(CVD)の両者に起因する認知症は混合型認知症と呼称され,AD with CVDの用語ももちいられている.ADにはアミロイド血管症がほぼ必発し,それに付随する脳葉型微小出血,皮質型くも膜下出血,皮質微小梗塞などの微小血管病変がみとめられる.アミロイド血管症に加え老人斑,神経原線維変化などのAD病理があれば診断はADであるが,これらが無ければVaDの範疇に属する.ADとVaDの間には重複する病態があり,各々の臨床的特徴の理解が重要である.
  • 吉田 眞理
    2013 年 53 巻 11 号 p. 919-922
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    神経疾患の確定診断には病理診断が不可欠である.臨床診断では神経症候学や神経画像の情報が重要な役割をはたすが,画像所見は病変の部位や大きさ,脳浮腫や脳萎縮という性状を経時的に観察できる利点があるものの,病変の質的診断はあくまで,脳生検や剖検による組織学的所見によらなければ確定できない.病理診断の第一歩は,肉眼所見の観察から始まり,疾患特異的な病変分布を捉えることがポイントである.肉眼所見の正誤は顕微鏡診断のフィードバックにより確認あるいは修正・訂正され,さらに画像所見,臨床症候を裏打ちする.パーキンソニズムを呈する神経疾患の脳の肉眼所見を呈示し,その可能性と限界を概説する.
  • 伊藤 道哉
    2013 年 53 巻 11 号 p. 923-925
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    医療技術の高度化,分子標的薬等新薬の保険収載は,画期的な治療効果につながる可能性をもたらしながら,窓口負担の増加・国民医療費の増大をまねき,中医協でも費用対効果の議論が活発化している.国民皆保険制度も半世紀,制度疲労によるほころびを医療者の気合いで持ちこたえるには限界がみえており,東日本大震災の深刻なダメージは,医療崩壊を加速させる.神経内科の領域は,「難病」制度のなかで保険診療をおこなうかぎりにおいて,患者の自己負担をおさえることができたが,高額療養費を巡る議論,がん対策基本法等疾病対策の法制化の潮流の前に,大きな転換点を迎えている.法制化による難病対策の安定財源確保が喫緊の課題である.
  • 髙橋 昭
    2013 年 53 巻 11 号 p. 926-929
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    日本の神経学はオランダの軍医Pompeから19世紀中期に長崎に導入された.その門下の司馬凌海は日本最初の神経治療薬を紹介した.その後,ドイツからBaelzが来日,その門弟らが1902年に「日本神經學會」を創設した.当時の日本は国民病の脚気が神経学研究の中心であった.しかし,神経学者は脚気の病因として感染説あるいは中毒説を掲げ,正鵠を射ることができなかった.Vitamin B1欠乏が確立されると神経学の研究は下火となった.神経学の講座の独立が遅れたこと,講座制のため神経学が正しく継承されなかったこと,神経症候学,神経診断学などの教育が不十分であったことなどから,戦前日本の神経学は一時低迷した.診断学が充実され,神経内科講座が独立し,神経内科学が隆盛したのは戦後になってからである.
教育講演4
  • 石井 賢二
    2013 年 53 巻 11 号 p. 930-
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
  • 宮井 一郎
    2013 年 53 巻 11 号 p. 931-933
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    運動学習の首座である小脳が障害された脊髄小脳変性症(SCD)では,脳卒中のように,use-dependent plasticityに基づいた,練習量にある程度依存した機能改善が得られるかどうかは十分に検証されていない.また介入による機能改善は病変の拡大や病状の進行による機能低下とのトレードの上に成立することにも留意する必要がある.ドイツおよび本邦の介入研究から,SCD患者に対する短期集中リハにより,短期効果として小脳性運動失調,日常生活動作,歩行が有意に改善することが示され,長期的には半年から1年程度の効果の持続が観察されている.効果の持続には,家庭での自主練習量の確保をふくめ,生活活動の向上が重要であると考えられる.
  • 村松 慎一
    2013 年 53 巻 11 号 p. 934-937
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    漢方薬は,草根木皮などの生薬を数種類,組み合わせて構成される.重篤な副作用として偽アルドステロン症,間質性肺炎,腸間膜静脈硬化症などが知られているが一般的に安全性は高い.詳細な作用機序が未解明なため,現代でも処方の選択は古典に記載された臨床医の経験則によることが多い.実用性に乏しい古代の理論に執着する必要はないが,陰陽・虚実・寒熱・表裏というそれぞれが対をなす病態分類や,気・血・水,五臓六腑,六病位などの基本的な概念を理解することにより先人の経験を活かすことができる.神経内科の日常診療で頻度の高い頭痛・めまい・しびれなどを訴える患者には,原疾患を問わず漢方薬の適応がある.
  • 石田 和之
    2013 年 53 巻 11 号 p. 938-941
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    今日では何科の医師にとっても最小限の漢方の知識は不可欠である.しかし,神経内科領域では漢方はまだ十分認知されていない.神経変性疾患などの難病に対する漢方の利点は今後の課題であるが,日常診療上よくみられる頭痛・しびれ・疼痛・めまいなどの症候には漢方が有用である.これら症候の原因が重篤な疾患ではなくても,愁訴に苦しむ患者数は多く,社会への影響は小さくない.そこで,呉茱萸湯・五苓散・牛車腎気丸・疎経活血湯・苓桂朮甘湯など,わずか10数種類の漢方薬を使いこなすことができれば,治療の選択肢が広がり有益である.また,漢方の使用経験を集積し共有できれば,漢方のエビデンスの確立に役立つと考えられる.
ホットトピックス2
ホットトピックス3
  • 林 由起子
    2013 年 53 巻 11 号 p. 947-950
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    骨パジェット病および前頭側頭型痴呆をともなう封入体ミオパチー(inclusion body myopathy with Paget’s disease of bone and frontotemporal dementia; IBMPFD)は,40歳頃に発症し,骨格筋,骨,中枢および末梢神経障害を示す疾患である.常染色体優性の遺伝形式をとり,VCP遺伝子の変異による.筋力低下はほとんどの患者にみとめられる.筋病理学的には筋原線維性ミオパチーの範疇に入るが,これに神経原性の変化がみとめられるばあい,本疾患をうたがう.骨病変は欧米に比し,その頻度は少ない.前頭側頭型痴呆は約1/3の例でみとめられ,自験例では認知機能の低下の他,運動ニューロン障害や小脳症状など多彩な神経症状がみとめられた.IBMPFDは本邦でもまれな疾患ではなく,多系統の障害をみとめるばあい,本疾患を考慮する必要がある.慎重な家族歴の聴取も不可欠である.
  • 早川 幹人
    2013 年 53 巻 11 号 p. 951-955
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    脳血管内治療は低侵襲性と新規デバイスの開発・導入により飛躍的に発展している治療分野である.わが国では脳神経外科医が多くを担うが,日本脳神経血管内治療学会の専門医資格を有する内科医も近年徐々に増加してきている.
    虚血性脳血管障害は,急性期診療と再発予防を神経内科(脳卒中内科)医が担うことが多いが,迅速な初期対応と適切な病態把握に加え,それに基づく治療適応判定,血管内治療と周術期管理までシームレスに関与し実際におこなうことで,より緊密・円滑な患者管理が可能となり,脳卒中患者が享受する恩恵はより大きくなると考えられる.内科を基盤とした脳血管内治療医のさらなる充実と脳卒中医療への貢献が望まれる.
  • 岩坪 威, 橋本 唯史, 若林 朋子, 富田 泰輔, 諸橋 雄一
    2013 年 53 巻 11 号 p. 956-
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
  • 岡田 浩美, 林崎 良英
    2013 年 53 巻 11 号 p. 957-961
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    林崎らは大規模な包括的トランスクリプトーム解析に向けて,完全長cDNAライブラリーの構築ならびに,それらをハイスループットシーケンシング解析に応用する新たな技術を開発してきた.彼らが組織するFANTOMデータベースの解析により,ゲノムDNAの約2%だけが機能を持つという常識に反し,ゲノムDNAの70%以上が転写され,大多数のRNAが非タンパクコードRNA(non-codingRNA; ncRNA)であることを明らかにした.これらの一連の知見により新たに「RNA大陸」という広大な研究分野が創出された.近年のRNA研究の進展により,生命活動におけるncRNAの多様な機能がつぎつぎと報告されている.
  • 吉峰 俊樹, 柳沢 琢史, 平田 雅之
    2013 年 53 巻 11 号 p. 962-965
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    Brain-machine interface(BMI)とは,脳と機械の間で信号をやり取りすることにより失われた神経機能の代行や回復の促進に役立てようとするものである.とくにこの10年間の進歩はいちじるしく,臨床研究から実用化に向けた開発が進められている.その開発は神経学,基礎神経科学,情報科学ならびに多くの工学領域が融合した新しい産業分野の創設につながるものと考えられるが,一方では,研究の進歩により脳活動,とくに神経信号処理について新しい知見をもたらし,様々な神経疾患の病態解明にも役立ち,新しい治療モダリティーの開発につながるものと期待される.
ホットトピックス4
  • 平 孝臣
    2013 年 53 巻 11 号 p. 966-968
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病や本態性振戦(ET)のような不随意運動疾患以外にも,重度の痙縮,運動麻痺回復などが外科治療の対象となる.ETではposterior subthalamic areaが新たなターゲットとして注目を浴びている.また低侵襲的治療としてMRI内でおこなう経頭蓋集束超音波照射治療が注目されている.全身性ジストニアでは淡蒼球内節のDBSが確立されている.書痙や音楽家の動作特異性局所ジストニアも視床Vo核の手術により長期効果がえられる.軽微な外傷に続発する各種不随意運動やFixed dystoniaはしばしば治療に抵抗し,外科的治療の考慮も必要である.重度痙縮には髄腔内バクロフェン治療(ITB)が確立されているが,ボトックス注射の対象となる局所の痙縮には選択的末梢神経縮小術も有用である.
  • 池田 修一
    2013 年 53 巻 11 号 p. 969-973
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy; NA)は一側上肢に激烈な痛みに続いて麻痺と高度な筋萎縮が起る病態であり,その原因は特発性腕神経叢炎と考えられている.本疾患は従来,自然軽快することから予後良好であると位置付けられてきた.しかし罹患肢の実際の機能予後は半数以上が不良である.その最大の原因は確定診断にいたるまでの期間が長く,多くの患者は発病後2~3ヵ月後にやっとNAの診断が下されている.このため急性期の疼痛抑制治療,その後の運動機能改善に向けてのリハビリ治療などがほとんどなされていないのが実情である.本疾患が正確かつ早期に診断されるためには一般医家,とくにNA患者が最初に受診する可能性の高い整形外科領域の医師にNAの疾患概念を理解してもらうことである.またNA の成因として腕神経叢における免疫関連の末梢神経炎が推測されており,免疫調整療法は本疾患の有望な治療法になりうる.すでに副腎皮質ステロイドホルモンはNA急性期の疼痛緩和に有効なことが実証されている.それに加えてわれわれは免疫グロブリンの大量静注療法(IVIg)とステロイドパルス療法の併用がNAの運動麻痺に対して有用であることを最近提唱している.
シンポジウム1
1 パーキンソン病の初期診断
  • 高橋 一司
    2013 年 53 巻 11 号 p. 974-976
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)の臨床診断は運動症状によってなされるが,発症時にほとんどの患者で多彩な非運動症状が出現している.疫学研究から非運動症状の一部が運動症状以前(premotor phase)からみとめられるというエビデンスが示され,Braakらの病理進展仮説とともに注目を集めている.将来のPD発症のriskに関して便秘と嗅覚障害では感度は高いが特異度は低いとされる一方,REM睡眠行動異常では感度は低いが特異度が高いことが知られる.PDの初期診断におけるpremotorphaseの非運動症状の位置付け,その有用性に関しては今後も精緻な研究が必要である.
  • 織茂 智之
    2013 年 53 巻 11 号 p. 977-980
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病の初期診断における神経放射線診断について解説する.脳MRIはパーキンソン症候群の鑑別診断には必須の検査で,近年拡散強調画像,神経メラニン画像などが導入されている.MIBG心筋シンチグラフィはパーキンソン病とその他のパーキンソン症候群を鑑別する際にしばしばもちいられ,初期診断にも有用である.脳血流スペクトは,脳MRIなどで萎縮がみとめられる前に,神経細胞の機能低下部位として確認されることがあり,初期診断に有用なことがある.ドパミントランスポーター画像は本邦では未承認であるが,パーキンソン症候群を呈する変性疾患では病早期から異常がみとめられ,パーキンソン病の初期診断にも有用である.
  • 三輪 英人
    2013 年 53 巻 11 号 p. 981-982
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病患者の黒質は経頭蓋超音波検査で高輝度に描出される.高輝度変化の陽性率は90%以上に達すると認識されている.健常者の約5~10%においても黒質高輝度変化がみとめられえる.黒質高輝度変化は,経年的に変化せず,臨床症状とも相関しないことから,神経細胞変性を反映したものではなく黒質ドパミン神経細胞の脆弱性を示すものと推定されている.黒質高輝度変化の原因は解明されていないが,組織中の鉄含有量と相関することが明らかにされている.パーキンソン病における黒質の高輝度変化は,運動症状の出現前から陽性であることから,早期診断または発症前診断への応用が期待されている.
  • 小野 賢二郎, 山田 正仁
    2013 年 53 巻 11 号 p. 983-985
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    αシヌクレイン蛋白(αS)は,モノマーからオリゴマー,そしてプロトファイブリルや線維といった,多量体に凝集していくが,近年,早期中間体であるオリゴマーが毒性がより強いとされている.最近,パーキンソン病やレビー小体型認知症で脳脊髄液中αS濃度が有意に減少している一方で,パーキンソン病でαSオリゴマー濃度が上昇していることも報告されている.また,血液中でもαSオリゴマー濃度がパーキンソン病では有意に上昇しているとする報告もある.血液や脳脊髄液中αSの詳細な解析はパーキンソン病をはじめとするαシヌクレノパチーの有効なバイオマーカー開発につながる可能性がある.
2 心房細動に伴う心原性脳塞栓症の予防
  • 三田村 秀雄
    2013 年 53 巻 11 号 p. 986-988
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    心房細動では左房内の血液うっ滞にともない時間依存的に血栓が形成されるが,その頻度は心内膜機能に大きく影響される.そこで塞栓症の予防にはまずCHADS2に代表される生活習慣病の改善が重要で,次にAFの予防があげられる.1次的には高血圧の治療,2次的にはカテーテルアブレーションによる根治療法が有力であるが,それらが不十分なばあいには抗凝固療法に頼らざるをえない.塞栓症リスクが少しでもあれば適応と考えられるが,そこではAFの早期診断,AFの持続時間の確認,さらには出血性合併症のリスク評価なども重要で,薬剤としては脳出血の合併リスクがワルファリンよりも少ない新規抗凝固薬が第一選択となる.
  • 木村 和美, 山下 眞史, 芝﨑 謙作
    2013 年 53 巻 11 号 p. 989-991
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    心原性脳塞栓症は,脳梗塞の中の約3割であり塞栓源の大半は心房細動である.心房細動を有する脳梗塞の特徴は,高齢女性に多く,梗塞巣の大きく,脳主幹動脈閉塞例が多く,発症時に重症であり転帰も不良であることがあげられる.発症前の抗凝固薬の使用は32%であり,ワルファリンの内服患者のPT-INRは,1.6未満が半数以上で治領域に達していない.入院中の再発は7.5%であり心房細動なし群とくらべ同じである.心内血栓は,経食道心エコー図検査で16.4%に血栓が検出される.退院5年後の死亡をみると,心房細動あり群がなし群より明らかに死亡率は高い.まとめると,心房細動を有する脳梗塞は,重症かつ転帰不良で,長期転帰も不良である.
  • 北園 孝成
    2013 年 53 巻 11 号 p. 992-993
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    新規経口抗凝固薬(Novel Oral Anticoagulants; NOAC)として,直接的トロンビン阻害薬であるダビガトランならびに凝固Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンとアピキサバンが承認され臨床応用されている.これらNOACの第III相臨床試験ではワルファリンと比較して有効性,安全性ともにすぐれていることが明らかになった.とくに頭蓋内出血の発症が少ないことがNOACの特筆すべき特徴といえる.これらNOACは非弁膜症性心房細動患者(Non-valvular atrial fibrillation; NVAF)の脳梗塞発症予防のために有用な薬剤であるといえる.
  • 内山 真一郎
    2013 年 53 巻 11 号 p. 994-996
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    ワルファリンは血液凝固モニター,ビタミンK摂取制限,他剤との相互作用などの使いにくさがあるが,新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulant; NOAC)は血液凝固モニターやビタミンK摂取制限の必要がなく,他剤との相互作用も少ないので,多忙な患者や遠方の患者,納豆や緑黄色野菜を制限したくない患者,併用薬が多い患者にはNOACが推奨される.ワルファリン投与例でTTR(time in therapeutic range)が低い患者にはNOACへの切りかえが推奨されるが,INR(international normalized ratio)が安定している患者ではNOACに変更する必要はない.NOACはワルファリンよりはるかに高価なので,経済負担が困難な患者にはワルファリンが推奨される.低リスクの患者や抗凝固薬の服薬歴がない患者では脳出血のリスクが少ないNOACが推奨される.
  • 矢坂 正弘, 岡田 靖
    2013 年 53 巻 11 号 p. 997-999
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    大出血,脳内出血,頭蓋内出血のリスクとして,高齢者,日本人をふくむアジア人,脳卒中の既往,アスピリン併用,腎機能障害,低体重,ワルファリン療法が指摘されている.調整できる高血圧,高血糖,喫煙,過度のアルコール摂取を徹底的に管理することは重要である.抗血栓薬の併用を避けることや頭蓋内出血が少ない新規経口抗凝固薬を選択することも有効な方策である.大出血時には休薬,止血,および点滴によるバイタルの安定を図り,頭蓋内出血では十分な降圧をおこなう.ワルファリン療法中はビタミンKや第IX因子複合体投与を考慮する.新規経口抗凝固薬療法中は第IX因子複合体投与や内服後早期なら胃洗浄や活性炭投与を念頭に置く.ダビガトランは透析で取り除くことが期待される.
3 神経筋疾患における発症前遺伝子診断の現状と課題
  • 大森 博之
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1000-1002
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    神経内科は遺伝子検査に臨むことがしばしばで,遺伝相談もよく受けるが,その先のカウンセリングとなると時間や人員のことで,対応しきれないことが多い.現在,地方病院の神経内科外来を担いながら遺伝相談をおこない,必要時には臨床遺伝専門医としての対応もおこなっている.どこまで踏み込むか,どの時期で2次,3次カウンセリングに引き継ぐか,ケースごとに難しい対応を迫られる.大学病院の遺伝カウンセリングチームの存在はカウンセラーにもクライエントにも安心感をもたらすが,早期に委ねることがすべて最良の選択とは限らず,主治医の踏ん張りも必要と感じている.
  • 柊中 智恵子
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1003-1005
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    神経筋疾患では,遺伝子診断をおこなってはじめて診断を確定できる疾患もあり,遺伝子診断の意義は大きい.しかし,この診断結果が多くの血縁者にもたらす影響は甚大であり,発症前遺伝子診断や出生前遺伝子診断といった人生を左右する選択に波及する.
    常染色体優性遺伝性疾患のひとつである家族性アミロイドポリニューロパチーで発症前遺伝子診断を受けた人5名に対しておこなった質的研究では,‘遺伝’がその人の人生に,そして家族ダイナミクスにも大きな影響を与えていた.
    遺伝性疾患患者・家族を支えるには,遺伝子診療部だけでなく,遺伝に関する一次・二次・三次相談というすべての医療機関が連携して継続した支援ができる体制作りが重要となる.
  • 吉田 雅幸
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1006-1008
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    近年のゲノム解析研究の成果によって,神経難病の原因遺伝子の解明が相次ぎ,疾患の確定診断に大きく貢献しているだけでなく,患者の家系内血縁者の遺伝的リスクについても検討可能な状況が生まれている.しかし,すでに発症している患者の確定診断と,未発症の家系内血縁者の発症前遺伝子診断とでは,患者・家族の精神的ストレスや医療者の対応などの面で大きくことなるため,未発症の家系内血縁者を対象とした発症前遺伝子診断のハードルは低くない.当該患者の受診を端緒とし,遺伝子検査による発端者の確定診断から家族への説明を経て,家族の発症前診断にいたる過程には神経内科医,臨床遺伝専門医,看護職をはじめ多くの医療者がかかわっている.これら様々な局面でわれわれが直面する問題もまた多様である.
4 iPS細胞研究の現状と展望
  • 高橋 淳
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1009-1012
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病に対しては1980年代の後半から胎児中脳腹側細胞の移植がおこなわれ一定の効果がみられているが,倫理的問題に加え移植細胞の量的,質的問題があり一般的な治療にはなっていない.これらの問題を解決するために幹細胞とりわけES, iPS細胞をもちいた移植治療に期待が寄せられている.分化誘導技術が発達し,ヒトES, iPS細胞から効率的に中脳ドパミン神経細胞が誘導できるようになった.さらには選別技術も開発されつつある.ラットや霊長類モデルへの移植では行動改善が観察されており,臨床での効果も期待される.あとは安全性を厳しく検証すること,万が一腫瘍化がおこったときの対策を立てることが重要になるであろう.
  • 中村 雅也, 戸山 芳昭, 岡野 栄之
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1013-1015
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    細胞移植による脊髄の再生医療を確立するために,われわれはラットおよびサル脊髄損傷に対する神経幹細胞移植の有効性と安全性を報告してきた.しかし,胎児由来組織を使用することにともなう倫理的問題のために,いまだ臨床応用にはいたっていない.本稿では,われわれがおこなってきた脊髄損傷に対するマウス,さらにヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)をもちいた細胞移植に関する基礎研究を紹介し,今後の臨床応用にむけた課題とその取り組みについて概説する.
  • 高橋 政代
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1016-
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
  • 大木 宏一
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1017-1019
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    脳梗塞に対する幹細胞療法には,①非神経系幹細胞の移植,②内在性神経幹細胞の活性化,③神経幹細胞の移植などが挙げられる.その中でも,「移植細胞による損傷脳組織の置換」という機能回復機序に重点をおくなら,神経幹細胞をもちいる手法がもっとも効果的と考えられる.筆者らは,ヒトiPS細胞由来神経幹細胞を脳梗塞モデル動物に移植する基礎研究をおこない,移植により機能回復がえられ,移植細胞が腫瘍形成せずに機能的・形態的に成熟した神経細胞に分化したことを証明した.本シンポジウムでは,今後の臨床応用へ課題もふくめ,iPS細胞をもちいた脳梗塞の再生医療について述べていく.
  • 江川 斉宏, 井上 治久
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1020-1022
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    われわれは,transactive response DNA binding protein 43 kDa(TDP-43)遺伝子変異を有する家族性筋萎縮性側索硬化症(familial amyotrophic lateral sclerosis; FALS)患者由来の人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPS細胞)を樹立し,それらから分化誘導した運動ニューロンをもちいてALSの病態解析をおこなった.FALS由来iPS細胞の運動ニューロン分化能は正常であり,神経細胞へ分化後,TDP-43タンパク質は生化学的に不溶性を獲得していた.純化したFALS運動ニューロンでは,神経細胞骨格関連の遺伝子が低下し,神経突起が短縮していた.さらに,酸化ストレスに対する脆弱性をみとめ,アナカルジン酸投与によりこれらの表現型は改善した.iPS細胞由来の運動ニューロンをもちいて,ALSの新規治療薬シーズの発見が期待できる.
5 Corticobasal Syndrome
  • 下畑 享良, 西澤 正豊
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1023-1025
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    大脳皮質基底核変性症(CBD)は神経細胞やグリア細胞における異常タウ蛋白の蓄積を特徴とする神経変性疾患である.典型的な臨床症候として,進行性,非対称性の失行をともなうakinetic–rigid syndromeを呈するが,同様の臨床像を呈する症例の背景病理として,タウオパチーのほか,アミロイドパチー,TDPオパチー,α-シヌクレイノパチー,プリオノパチーが報告されている.このためCBDの典型的な臨床像を呈する症例の臨床病名として大脳皮質基底核症候群(CBS)を使用し,CBDは病理診断名として使用されるようになった.本稿ではCBSの臨床像,診断基準,背景病理を予測する症候について概説する.
  • 土井 宏, 田中 章景
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1026-1028
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    CBSの病理学的診断は多彩であり,遺伝学的背景も多彩である.病理学的には前頭側頭葉変性症(FTLD)である頻度がもっとも高く,他にAlzheimer病,Creutzfeldt-Jakob病,Parkinson病/Lewy小体型認知症などが挙げられる.FTLDの原因として頻度の高いMAPTGRNC9orf72変異やTARDBPFUSLRRK2CSF1R変異例では臨床的にCBSを呈する可能性があることが欧米を中心に知られている.しかし日本人のCBS発症に関与する 遺伝子については,単一遺伝子異常,疾患感受性遺伝子ともにまったくわかっておらず,今後多施設間で症例を集積,解析していく必要がある.
  • 篠遠 仁
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1029-1032
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    最近,大脳皮質基底核変性症(CBD)および症候群(CBS)の背景病理と生前のMRIにおける脳萎縮分布との対応を検討した報告がいくつかある.CBD群では健常対照群と比較して背側前頭前野,中心溝近傍,線条体,脳幹において萎縮がみられ,左右差がめだつ症例は多くはなかった.CBSでは背景病理にかかわらず中心溝周辺の萎縮がみられ,前頭側頭葉変性症(CBS-FTDL)ではそれに加えて前頭前野,線条体,脳幹に萎縮がみられ,アルツハイマー病(CBS-AD)では側頭·頭頂皮質,楔前部の萎縮がみられた.
    アミロイドイメージングに加えて,最近,タウのイメージング剤の開発も進んでおり,CBSの背景病理の診断には有力は方法となると考えられる.
  • 徳田 隆彦
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1033-1035
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    Corticobasal syndrome(CBS)の原因疾患を病歴と神経学的所見のみで正しく生前診断することは困難であり,バイオマーカーの開発が求められているが,未だ確立されたものはない.生化学的バイオマーカーでは,大脳皮質基底核変性症(CBD)とPSPはともに4Rタウオパチーであるので,髄液中の総タウ蛋白(t-タウ)がこれまでに多く検討されている.しかし,ほとんどが剖検例ではない臨床例の検討であり,対照群あるいはPSP群と比較して,増加していた報告と差がなかった報告とがあって確定的な結論がえられていない.個々のタウオパチーに特異的なタウ蛋白断片を髄液中に同定しようという試みがおこなわれている.
シンポジウム2
1 病態仮説に基づくアルツハイマー病治療法開発の現状と展望
2 パーキンソン病の非薬物療法とエビデンス
  • 林 明人
    2013 年 53 巻 11 号 p. 1046-1049
    発行日: 2013/11/01
    公開日: 2013/11/29
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病のリハビリは,運動療法や発声・嚥下のリハの有効性を示す報告も数多くあり,運動症状改善をめざす上で欠かせないものである.『パーキンソン病治療ガイドライン2011』で示されたエビデンスに加え,最新の研究・報告を解説した.リハのエビデンスづくりの難しさはあるものの,内科的・外科的治療とリハを組み合わせることで,運動症状のさらなる改善が期待できる.また,携帯歩行計(加速度センサー)を利用した,歩行障害の機能評価法を紹介した.歩行リズム,歩行加速度,歩行リズムの1日の変化,すくみ係数,睡眠時の体動などの項目を計測することで,患者がつける日誌では把握しきれない24時間にわたる定量的な評価方法を示した.
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