多発性硬化症は,中枢神経組織に慢性の炎症性脱髄病変をきたす疾患であるが,発症にいたる過程は3段階に分けられる.第一段階は,MS初期の標的抗原と考えられる中枢神経ミエリンの構成成分に対して,自己免疫応答が成立する過程である.第二段階は中枢神経組織への侵入である.活性化T細胞は容易に血液脳関門を越えることができ,中枢神経内に入った後にミクログリアなどから感染因子と類似部分のあるミエリン抗原の提示を受ける.その結果,第三段階として,炎症惹起性サイトカインの放出,末梢血から中枢神経組織へのマクロファージ動員を経て,最終的に脱髄がおきる.本稿では各ステップに関与する重要な免疫学的因子を概説する.