今日では何科の医師にとっても最小限の漢方の知識は不可欠である.しかし,神経内科領域では漢方はまだ十分認知されていない.神経変性疾患などの難病に対する漢方の利点は今後の課題であるが,日常診療上よくみられる頭痛・しびれ・疼痛・めまいなどの症候には漢方が有用である.これら症候の原因が重篤な疾患ではなくても,愁訴に苦しむ患者数は多く,社会への影響は小さくない.そこで,呉茱萸湯・五苓散・牛車腎気丸・疎経活血湯・苓桂朮甘湯など,わずか10数種類の漢方薬を使いこなすことができれば,治療の選択肢が広がり有益である.また,漢方の使用経験を集積し共有できれば,漢方のエビデンスの確立に役立つと考えられる.