2013 年 53 巻 6 号 p. 470-473
症例は39歳男性である.2年前から進行する構音障害,歩行障害,難聴を主訴に当科へ入院した.MMSEは28点,過去2回の左小脳腫瘍摘出術の病理診断はpilocytic astrocytomaであった.頭部MRI上びまん性に脳表T2短縮病変をみとめ,腫瘍由来の持続出血に関連した脳表ヘモジデリン沈着症と診断し,カルバゾクロム,トラネキサム酸の点滴静注と内服加療をおこなった.治療1週間後には髄液中の赤血球数,蛋白,フェリチンいずれも減少し,その後,臨床症状も改善した.脳表ヘモジデリン沈着症は難治性,進行性疾患であり治療方針として止血剤投与も検討すべき1方法と考えられた.