認知症の患者数の増加にともない,その診断法と治療法の向上は,現在の医学において最重要課題の一つである.診断においてはバイオマーカーの進歩が近年目覚ましい1~3).バイオマーカーは大きく(i)体液の生化学マーカーと(ii)放射線をもちいた画像の二つに分類される.アルツハイマー病の治療においては現在4剤が保険適応になっているが,いずれも神経伝達物質をモジュレートするものであり,根本治療薬ではない.根本治療薬としてはアミロイドβ(Aβ)をターゲットとした薬剤がいくつか開発されたが,いずれも治験の段階で効果が証明されず,実用にいたっていない.現在,タウをはじめとしてAβ以外の分子を標的とした薬剤の開発が活発である.