2014 年 54 巻 2 号 p. 162-165
症例は82歳男性である.朝食後,座位でいる際に意識低下と右片麻痺を呈する一過性脳虚血発作を発症した.頭部MRIで急性期脳梗塞の所見はなく,安静と補液で症状は約1時間で改善した.左総頸動脈高度狭窄と,ECD-アセタゾラミド負荷脳血流シンチで左大脳半球の脳循環予備能低下を確認した.さらに,24時間血圧測定で,毎食後に収縮期血圧が90 mmHgを下回る食後低血圧をみとめた.食後低血圧はαグルコシダーゼ阻害薬の内服で改善した.以後,再発作はない.左総頸動脈高度狭窄に食後低血圧が合併した血行力学的機序による一過性脳虚血発作と診断した.食後低血圧は高齢者に多く,虚血性脳血管障害発症を誘発しうる注意すべき病態である.