2014 年 54 巻 8 号 p. 648-652
症例は83歳女性である.2013年某月下旬に転倒して右大腿骨頸部骨折を受傷した.受傷から3日後に当院整形外科で人工骨頭置換術が施行されたが,術直後より胸部不快感・嘔吐が出現しSpO2が低下した.胸部造影CTで肺塞栓症は否定され心不全の診断で加療がおこなわれたが,血圧は低下し昏睡状態となった.翌日も昏睡状態が持続していたため当科依頼となり,頭部MRI拡散強調像にて両側半球・脳幹に多発性の微小高信号域がみとめられた.発症様式・経過および高信号域分布より骨頭置換術術後の脂肪塞栓による多発性脳梗塞と診断し,エダラボンの投与と全身管理をおこなった.術後脂肪塞栓による脳梗塞につき経時的画像変化所見もふくめて報告する.