2019 年 59 巻 10 号 p. 646-651
症例は難治の左内側側頭葉てんかんに対する左側頭葉切除術後にRoss症候群の発汗障害の分布の側方性が逆転した60歳女性である.10歳代より発汗障害が全身性にあったが,左側頭葉由来の複雑部分発作が難治に経過した20歳代には,この発汗低下は左半身にのみ見られ右半身の(代償性)発汗亢進を伴った.35歳時に左側頭葉焦点切除術後,発汗低下と代償性亢進の側方性が逆転し,緊張性瞳孔と腱反射低下・消失が顕在化し緩徐進行した.中枢神経病巣としてのてんかん焦点が,末梢神経に病態の首座を持つRoss症候群の表現型を変容させた可能性が長期の経過経過で示された.