臨床神経学
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短報
胸背部痛を伴わないStanford A型大動脈解離に穿通枝領域の多発性脳梗塞を合併した1例
北崎 佑樹浅野 礼林 浩嗣山村 修田邉 佐和香濱野 忠則
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2020 年 60 巻 12 号 p. 874-877

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抄録

症例は56歳男性.右上下肢の脱力が出現し,翌日に当科外来を受診.頭部MRIで左内包後脚と橋右側に新鮮梗塞が認められ入院となった.胸背部痛,血圧の左右差はなく,頸部血管超音波で解離を示唆する所見はなかった.D-dimerが2.4 μg/mlと上昇し,胸腹部造影CTを実施したところ偽腔内に血栓を伴うStanford A型大動脈解離を認めた.両側の総頸動脈には異常がなく,第27病日に上行大動脈人工血管置換術を施行した.穿通枝領域を含む複数の血管支配領域に脳梗塞を認め,D-dimerの上昇を伴う場合は胸背部痛や血圧の左右差がなくとも大動脈解離が存在する可能性を念頭に置くべきである.

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© 2020 日本神経学会
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