2020 年 60 巻 4 号 p. 264-267
症例は71歳男性である.2008年頃から左膝折れを自覚し転倒することが多くなった.その後,両下肢の筋力低下が緩徐に進行し,立ち上がる際に手すりが必要となったため,2014年11月に入院した.四肢筋にMMT4の筋力低下を認め,生化学検査でCK 304 IU/lと軽度高値であった.左上腕二頭筋生検で多数の縁取り空胞を認め,単核球の筋内鞘および非壊死筋線維内部への浸潤を伴っており封入体筋炎(inclusion body myositis; IBM)と診断した.抗PM/Scl-75抗体が陽性であった.免疫グロブリン大量静注療法を行ったが一時的な筋力改善に留まった.自己免疫学的病態の関与を考察する上で抗PM/Scl抗体陽性IBMの報告は稀であり重要と考えられた.